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◆◇◆◇◆
翌日。
「はぁうう…」
秋祭りの衣裳合わせを終え、咲良は大きな溜め息をついた。
ばあ様から譲って貰ったタブレットには、衣裳を身につけた守弥が映っている。
「えううぅ…」
普段着や和服もいいのだが、神職服もまたいい。
毛先に癖のある黒髪を纏めた姿が凛々しくて、咲良の胸はキュンキュンしっぱなしなのだ。
「さくらは、守弥が好きなんだねぇ…」
「………っ、はい…」
頬が物凄く熱い。
蒸気が噴き出してしまいそうで、どうにもならなくて下を向く。
「おばあ様」
「ん?」
「わたくしは、どうすればよいのでしょう…」
「ほえ?」
「わたくしが守弥さまをお慕い申し上げているのは皆様がご存知のことと思っております」
「うん。そうだねぇ」
「守弥さまがわたくしを大事にしてくださるように、………わたくしも守弥さまを大事にしたいですし、……その…」
口ごもる咲良の顔を、ばあ様は覗き込む。
「どうしても気恥ずかしさが先になってしまって、わたくし…あまり………守弥さまに好きとか…っ、殆どお伝え出来ていないように思うのです…っ」
「………ほえ?」
咲良の口から出た言葉に、ばあ様は目をぱちくりさせた。
片付けを手伝う式神や付喪神たちも、あんぐりと口を開けて着物を取り落とす。
『ちょ、ちょっと待てや!
昨日あれだけのラブラブちゅっちゅしといて、まだ伝わってねえとか思うか普通』
『どれだけ天然なんでしょう』
『あの巣作りの時なんか、明らかにアイツの頬と鼻の下が緩んでたってえのに…。
まさか気づいてないとか…。うわ…』
『エロくて可愛い過ぎたから、時雨も興奮しちゃったのにさ』
『凄かったよな、尊い尊い言って鼻血だばだば垂らしてさぁ…』
煩悶する咲良には聞こえていないが、ばあ様には式神と付喪神達の囁きが聞こえている。
まさに、ばあ様が声を大にして言いたいことであった。
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