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「………」 二つの空間を繋いだ場所。 ある意味、これも界渡りだ。 「大丈夫。 両方でしっかり押さえてあるから、さくらは落ちないよ」 「は、はい…っ」 咲良が界渡りをするのはこれで三度め。 一度めは守弥が迎えに来てくれた時。 二度めは古い呪いを一身に受けて、守弥との思い出の場所へ無意識に次々飛んだ時だ…。 「咲良、みんながついてるから」 「は、はい…っ」 「さくら、怖かったら目ぇつぶっててもいいからな!」 「だぁいじょうぶ!おいら達もいる!」 向こう側の皆も咲良を励ます。 「は…っ、はい…っ!」 咲良はベッドの上へ立ち上がった。 だが、下腹でうねる熱で足に力が入らない。 「生まれたての小鹿みたいじゃの…」 「ぷるぷるしとる…」 「さくら、深呼吸だぞ!」 「んだんだ!」 ゆっくり深呼吸しつつ一歩踏み出す。 「危なっかしいなぁ…。 そっちに行く前にベッドから転がり落ちそ…」 「たしかに…」 「あたしが担いだ方が早いんじゃ…」 「熱がぶり返しかけてますので、やめた方がいいと思います。 対の鬼以外の匂いが体につくのは避けたい筈ですから」 「そんなもんなの?」 「ええ」 「ジャケットの上からでもダメ?」 「さくやなら多分拒否反応は出ないと思うけどねぇ…」 「多分て…」 その時。 本宮側からぶわっと風が吹いた。

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