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「「え……?」」 甘い香りと共に風に乗り、ひらりと花びらが舞う。 「………?」 ほんのり淡く染まった花びらが宙に舞い、風にほどけて紗(うすぎぬ)へと変化していく。 「…?」 「え、なになに?」 「………」 咲耶を挟んで宮司とばあ様が絶句する。 まさか。 幾重にも広がる紗が咲良を包み込んでいく。 「え…?」 決して捕縛したりするようなものではなく、紗は咲良をやんわり包み込む。 花びら混じりの風の中、覚えのある気配を感じて咲良は目を見開いた。 「え、………そ…な…、ご」 そこからは言えなかった。 ふかふかむちむちの真っ白なクリームパンに唇を押さえられたから。 (正確には、あと数ミリのところで止まっているが) 「ふえ…?」 『しー………』 クリームパンに見えたのは、もっふりした純白の猫又の手であった。 もっふりの艶やかな毛並みの真っ白な猫又…。 咲良にとっては初めて見る付喪神の姿…だが、中身は違う。 咲良が拵えた菓子をニコニコ頬張る…。 口元を押さえたのは、今喋ってしまうのが好ましくないということなのだろう。

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