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『界の隙間に落ちでもしたら、対の鬼が悲しむからな。
軽く手伝うだけだ。絶対苦しくはさせないから安心しろ』
「は、はい…」
こくりと頷くと、猫又が付喪神達に向き直る。
「手の空いてる者で紗の端をまとめてくれ」
「「お、おう!」」
咲良を包む紗の端を式神がつかんでまとめる。
『先に紗、咲良がそっちに着いたら毛布の順番だ』
「「おう」」
体を支えてもらえている安心感もあり、多少よろけても大丈夫だと思うことにする。
ぎこちないながらも力が入らない足を前に進めていく。
部屋と保健室の境界にさしかかり、真っ白な猫又が向こう側に合図を送る。
「いまだ!」
「「せーの!」」
「ひゃ………っ」
紗の束が引っ張られ、微かな違和感の後に咲良はいつもの部屋の寝台の上へ。
「よし、離しましょう」
「うん!」
毛布が付喪神達によって引っ張り出される。
皆の手を借りてようやく戻れた事で気が抜けたのか、咲良はそのまま寝台の上に倒れこんだ。
「ばばは咲良の荷物を受け取ってから戻るよ」
「私も後でそちらにお邪魔します」
「皆~、よろしくね」
「「おう、まかしてくれ!」」
お互いに声をかけたところで空間は閉じられた。
「………あんなにいけめんオーラ駄々漏れの猫又、うちにいたかねぇ…?」
「あー………、まあ、そうですねぇ…」
ばあ様と宮司にはなんとなく心当たりがあった。
…敢えては言わなかったが……。
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