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「おいおいおい…」
「ちょっと待て…」
「対が困るって…」
「逆だろ…」
前回巣作りした時の守弥の反応を覚えていないのか…。
あれほど嬉しそうにしていただろう、と。
思わぬ反応にご祭神もどう反応したものかと困惑ぎみだ。
「さくら、焦れ焦れの時は巣作りしといた方がいいって」
「でも…っ」
「巣作りしない方が鬼を困らせる」
「……っ、」
「対に巣作りさせられない甲斐性なしかよって、思われるからさ…。
ここんちは誰も思わねえけど、分家の奴らとか分家の奴らとか分家の奴らとかさ…」
「特にあの口煩いやつな…」
「う…、うう…」
巣作りしたい、だが守弥に面倒をかけたくない、かといって困らせたくない。
何をどうすればいいものか…。
「巣作り、してやんなよ…」
「ううう…」
「対と一緒に片すのが嬉しいんだって」
「前の時だって咲良を抱っこしながらすんげえニコニコして片してたじゃねえか」
「んだんだ」
「うぅ…」
頑なに拒む咲良。
猫又の姿のご祭神が深く息を吐いて横に首を振る。
「………思った以上に消耗しているし、巣作りしたくてももう足腰が立たないだろうから、いま出来ることをしてやろう。
咲良、羽織ってる上着の中の邪魔な服を減らせ。
対の鬼の服と香りが付いてるその毛布でぐるぐるに巻いてやるから」
「はうぅ…」
一旦ジャケットを脱いでカタカタと震える手でブレザーのボタンを外す。
ブレザーとスラックスを脱いで寝台の下へ落としてジャケットを再び羽織る。
その間に下敷きにしていた毛布を式神が引く。
守弥の香りが付いてる方を内側にして、皆で咲良をぐるぐると巻いていった。
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