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咲良が毛布でぐるぐる巻きになった。
「はう…」
偶然巻き込んだ守弥の枕に抱きつくと、下腹の熱が更にグリグリうねり出す。
「……んぁ…、……は…ぅ…っ」
好きで好きでたまらない。
早くぎゅうぎゅうしてもらいたい…。
耳殻をはみはみされたい。
それから…。
熱くなるばかりの吐息ごと、唇を啄まれたい。
「守弥…さま…」
下腹は熱がうねり、背中はゾクゾクする。
頭の中がざわざわして、どうにかなってしまいそうだ。
「……っ、…ぁう…」
守弥の香りに包まれているのに、どんどん守弥の気配が少なくなっていってるような気がする。
辛い。
苦しい。
頭の中のざわざわが止まらない。
「守…弥……さま…」
はくはくと喘ぐ口から漏れるのは、切れ切れの声と熱い吐息だけ。
早く。
早く帰って来て…。
大粒の涙が零れて、止まらない。
瞬きも忘れて見開いたままの目。
息をする度にゼイゼイともひぐぅとも取れるような変な音がする。
「………目が、すんげえ虚ろになってる…」
「まばたきもしてない…」
「息の音、おかしい…」
部屋の温度はそんなに低くはない。
なのに、咲良が吐き出す息が白い。
「なんかこう、酸欠みたいだ」
「思ったより重症なんじゃ…」
「えええええ…」
ご祭神が猫又の姿のまま、クリームパンの手を顎に当てて考え込んでいる。
「このままだと、対が来るまでに焦れ焦れしすぎて枯れるかもしれん」
「ヤバイぞ」
「枯れるって」
「頭おかしくなって戻れなくなるやつだべ」
「うわわわわわ…」
「なんとかしねえと…」
「さくらぁ…」
白い息に雪の結晶のようなものが混じり始めている。
対の焦れ焦れでご祭神が出てきた理由も頷ける。
単なる加減の間違いではなく、命に関わるくらい深刻な状況だったのだと。
守弥が来るまでなんとか踏ん張ってくれと、その場にいる皆は願うばかりだ。
「…も……ゃ……、……っ、………」
声を出すのもしんどいのだろう。
一分一秒が長く感じられて、枕元で雲外鏡がおろおろする。
「なんとかなんないかのう…」
「早く来れねえかのう」
「……………っ」
参道の方を見ていたご祭神が一瞬表情を変えた。
「………ギリギリだな…。
道を開けてやれ」
「「………!」」
集っていた付喪神や式神達が一斉に動き、廊下から部屋の入り口、そして寝台までの道があけられた。
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