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「な……?」
心臓が跳ねた後、ぎゅうううっと鷲掴みにされているような痛みが来た。
『守…弥、さま…』
切れ切れの声。
「咲良!?」
守弥の香りに包まれているのに、飢えが止まらない。
下腹の熱がぐりぐりとうねり、背中はゾワゾワする。
息をするのがしんどい。
暑いのか寒いのかすらも少しずつわからなくなっていく。
守弥を求めて見開いた目からは止めどなく涙が流れて、虚無が心を満たそうとしている。
『はう…』
はぐはぐと喘いでいる咲良の様子が頭の中に流れ込んで来ている。
吐息が白くなり、口元に触れた毛布には薄く氷がつきはじめて。
これが鬼夜叉が言っていた「枯れる」状況なのだろうか…。
湖を過ぎてカーブを曲がる。
「待ってろ」
参道を上がり、ドリフト気味に車を停めて、もろもろの荷物を引っ掴んで玄関へ駆ける。
「あっ、守弥さん!」
「おかえりなさい!」
「急いで、急いで!」
社務所の神職達がパソコンが入っているバッグをすかさず受け取り、部屋へと促す。
挨拶をする余裕もなく、部屋へと走った。
「……?」
やけに廊下が寒い。
妙な冷気を感じながらも先を急ぐ。
「あっ、来た!」
「早く、早く!」
道を開けてくれていた式神と付喪神達が言葉少なに先を促す。
「咲良!」
駆け込んだ先には、毛布でぐるぐる巻きにされた咲良がいた。
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