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「は…」
「良かった…」
「間に合った…」
咲良の呼吸が戻り、周りにいた皆がようやく深い息をついて床にへたり込んだ。
「………咲良」
「はう…」
「これだけ辛い状況なのに、巣作りしてなかったのか…?」
「えう…?」
守弥の疑問に、咲良がギクリとする。
「え、えう…」
「なんだか状況がちぐはぐな気がするんだが…」
守弥に焦がれて暴走したのに、巣作りはされていない。
なのに呼吸ができなくなる位に焦れ焦れしていた。
怪訝な表情を浮かべる守弥に、雲外鏡が慌てて答える。
「あ、あのっ、その、な、…咲良、頭の中がざわざわして混乱してたんだよ」
「んだんだ」
「混乱してさ、巣作りしたら守弥が困るかもしれないって」
「困る…?」
「いっぱい散らかしたら片付けるの大変になるからって…」
「そうなのか?」
「…はい…」
悄々とする咲良に守弥が小さく溜め息をつく。
「………焦れ焦れの時は混乱するからな…。
今回は仕方ないとして、次は無茶をするなよ」
「う…、はい…」
「巣作りは我慢するな」
「良いのですか…?本当に…?まことに…?」
「我慢して死にかけたろ…」
「………っ」
怒るのとは明らかに違う表情の守弥。
眉尻が下がった表情をどこかで見た。
どこだったろうか…。
暫し思案する。
「………っ。
………今の守弥さまは、お困りになった時の時雨さまと似ておられまする…」
「………」
「その、………悲しい時の、しょぼーんなお顔…。
……………わたくし、………守弥さまを困らせてしまったのですか…?」
「そうだな…。
困った…。しょぼーんだな…」
「うう…」
「巣作りしてもらえないのはとても寂しい」
「う…っ」
「次はちゃんと巣作りしてくれ。
して貰えないと俺が凄く困る」
「………守弥さまがお困りになる…」
「悲しいしな」
「………」
「しかも、物凄くしょぼーんだ………」
「う…」
がっくりと肩を落としている姿を見て何とも居たたまれない。
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