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「わたくしが…巣作りしないと…守弥さまがお困りになる…。 寂しい思いをされる…」 「ああ」 「とても、……しょぼーん…と」 「ものすごく、だな」 「しょぼーんとされるのは…悲しゅうございまする…」 咲良は守弥の眉間に触れる。 「しょぼーんは嫌でございまする…」 「ん」 「困らせとうございませぬ…」 「そうだな」 眉間に触れる手が、八の字になった眉を治そうと頑張っている。 皆が息を詰めて見守る中、守弥が小指だけを立てた手を差し出す。 「………っ」 「約束な」 「………」 「焦れ焦れの時はちゃんと巣作りする」 「いっぱい散らかしても…?」 「もちろん。 盛大に積んで散らかしてくれ」 「巣作りしてもお困りには…?」 「して貰えない方が困るし、悲しいし寂しい。 ほら、約束してくれないと、もっとしょぼーんな顔になるぞ」 「うう…」 「約束」 「………」 「約束してくれ」 目の前に差し出された小指を見る。 「約束。ちゃんとしてくれないとな…」 「………お約束………いたしまする…」 「ん」 キュウッと指を絡めると、ようやく守弥の眉が八の字ではなくなった。 「お約束……いたしまする…。 巣作りいたしまする…」 「うん」 「守弥さまが、しょぼーんとされないように………わたくし、しかと……巣作りいたしまする………」 「いい子だな、咲良は」 チュ。 「……んに…」 指を絡めたまま、何度も唇が落とされる。 『………なんというか、その…』 『鬼が自ら尻に敷かれに行ったな』 『あ、やっぱそうなんだ』 『上手い誘導の仕方だよな~』 『これならもう心配ないよな』 『そうだな』 はらはらして見守っていた付喪神や式神がそっと陰行していく。 『これで大丈夫だな。 鬼は対の尻に敷かれてこそだからな…ふふ…っ』 猫又の姿のご祭神も、そうっと大気へ溶けていった。

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