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「ただいま~」 二人のあまあまなひとときを堪能する皆のところへ雲外鏡が戻ってきた。 「おー、とっつぁんおかえり」 「どうだった?」 「いやいや、わし、爆萌えしちゃったのう」 もじもじする雲外鏡に猫又が促す。 「勿体ぶらずに見せてくれよ」 「どんなだった!?」 「見せて見せて」 「待てない」 「まぁ、慌てるでねえよ」 「気になる…」 「早く早く!」 「みんな、心の準備はいいかの」 「「もちろん!」」 雲外鏡が頷き、腹に抱えた鏡をひと撫でした。 お互いに食べさせ合う様子や、守弥が咲良にお茶を飲ませる一面など、なんとも微笑ましい場面が映し出された。 「おおおおおおお…」 「自分でやれると言うのを制して敢えて飲ませてる」 「すげえ…」 「咲良の照れっぷりがまた…」 「ええのう」 「滾るのう…」 もうすぐ結婚式を迎えるのだが、まだ少し遠慮がちな咲良を守弥がうまく誘導している。 ここはもう少し踏み込んでもいい。 もっと堂々とすればいい、と声をかけている。 変に気を遣いすぎて危険な目に遭ったからか、咲良も素直に従う。 「守弥が自分から尻に敷かれに行ってるねえ」 「やっぱそうなんだ」 「尻に敷かれてなんぼだもんな」 うんうんと頷いている間にも、二人は微笑ましい様子を見せる。 ひと休みをし、空になった弁当箱を洗って片付ける。 厨房から洗面所へ向かい、二人並んで歯磨きをし…。 部屋に戻って寝台に横たわった。 軽く昼寝をするようだ。 そして、しばし…。 「お…」 「おおお…」 「なんと…!」 二人寄り添って寝入った。 「ここからまだあるでよ」 「ふむふむ………、……おおおおおおおお…」 いつもは守弥の左胸に咲良が耳をくっつけて眠るのだが…。 守弥の頭をフワッと抱える体勢だったのだ。 咲良が守弥を甘やかすようにも、大事な宝物を包み込んでいるようにも見える…。 そして、守弥も咲良を優しく包み込むように背中へ腕を回している。 「これさぁ、時雨が見たら鼻血だばだばだな…」 「尊いっつってな…」 「んだんだ」 咲良の焦れ焦れからの枯れかけは、取り敢えず上手く収まったようだ。 これから何度もこういうふうになるかもしれないが、きっと守弥が咲良の尻に敷かれにいってうまく纏める筈だ。 明日からは三連休。 その間に焦れ焦れの残滓が残らないようにぎゅうぎゅうハグをして、あまあまな時間を過ごすだろう。 咲良の誕生日に当たる月曜日には、学校からの帰りに二人で婚姻届を窓口に提出もしてくるだろうし、更にらぶらぶ度が増す。 なるべく邪魔をしないようにしておこうと、皆で目配せをしたのだった。

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