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「おばば、そろそろ拝殿に向かわないと」
「んだんだ!」
先導役の猫又達が声をかけにきた。
「おお、危ない危ない…!
すっかり激写に夢中になっていたねぇ」
「今日のさくらは特別可愛いからのう」
「滾っちゃったねえ」
ほくほく顔で袂にカメラを仕舞い、拝殿へ向かう。
「………」
控え室から拝殿の前まで歩いている内に、咲良は心臓が早鐘を打っているかのような気がしてきていた。
ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ!
おかしい。
心臓は耳の近くであったろうか。
足元がふわふわする。
顔が滅茶苦茶熱い。
拝殿の前に着いたところで先に歩いていた守弥が止まった。
ぽすん!
「はぶうっ」
「……!?」
守弥の背中に思いっきりぶつかった。
床に倒れる前に抱き止められる。
間近にある凛々しい顔に、更に心臓が跳ねた。
「ううう…」
「大丈夫か?
頬っぺたが結構熱いぞ」
「ら、らいりょうぶれす…」
何処か痛めてないかと案じる守弥に、ばあ様がタオルにくるんだ保冷剤を差し出す。
「これで落ち着かせるといいよ」
「あ、ありがとう」
「緊張しやすいからねぇ。
そこがまた可愛いんだよ」
火照った頬を冷やす様子に、ばあ様が目を細めた。
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