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胸が軋むのを深呼吸をして落ち着かせたところで、咲良は守弥の気配を探してみた。 「…………」 湯殿の掃除を終え、部屋へ足を向けたのがわかる。 とてとてと角を曲がると、スッと背筋の伸びた姿が見えた。 首筋から肩、腕、背中、背骨へのラインが綺麗だと咲良は思う。 程好く筋肉の付いたしなやかな腕、長い脚…。 咲良が理想とする男子の姿だ。 『わたくしの腕は、こんなにひょろひょろ…。 もりもり食べて鍛えれば、わたくしも守弥さまのようになれるのでしょうか…』 背が伸びたものの、あまり筋肉らしい筋肉がつかない。 腕立て伏せや腹筋をしても、手も足もゴツゴツしてくる気配はなく、本当に自分は男子なのか疑いたくなるくらいだ。 「何かこう、年頃の男子らしく武道でもすればよいのでしょうか…。 守弥さまのお腹のように綺麗に割れた腹筋になれたら…。 体術や弓を教えて頂いたら、肩幅も広くなって凛々しくなれそうな…。 あ、でも…、時雨さまに細身でいるとお約束したのを反故にしてしまうことに…」 さて、どうしたものか。 それなりに筋肉をつけるべきか、花嫁らしく細身でいるべきか…。 生っ白い自分は嫌だけれど、守弥の好みもある。 好きな気持ちを伝えきれていないことも、今の体格を変えたいことも、守弥に相談するのが一番のような気がして、そのまま咲良は部屋に駆け込んだ。

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