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一足先に部屋に入った守弥と、追うようにして部屋へ駆け込んだ咲良。 「お?」 「あっ、あう?」 普段走らない咲良が駆け込んで来たのが意外だったのだろう。 守弥は目をパチクリさせた。 「どうした?何か困ったことでも起きたか?」 「いや、あの…、あっ、あっ、はわ…っ」 守弥を見つけて追い付いたはいいものの、何をどう切り出したらいいのかがわからなくなってしまった。 確か…式神がくれたアドバイスは守弥に抱きつく事からであったが、ばったり鉢合わせの状態では抱きつきにくい。 はて、どうしたものか…。 「…どうした?具合が悪いのか?」 「いっ、いえ…、違うのです…」 気遣う守弥にいきなり抱きつけないし、話の切り出し方もどうしたら良いのか。 一歩が踏み出せなくて膠着状態になっている咲良を、ドアの外からやきもきしながら見守るのは付喪神のみなさんだ。 『ああ~、そこで固まったらダメだってぇ…』 『躊躇っちゃ駄目だべよ』 『あああ~っ』 守弥も咲良の様子に戸惑っている。 ここで事態を好転させるには、どうしたら良いのだろう。 膠着したままの守弥と咲良。 『どうしたもんだべなぁ…』 気を揉む付喪神たち。 『あり?』 『ん?ちょ、あれ、あれ見てみ』 『お、おお!』 猫又が示した先に、小さな影がひとつ。 とととととっ、しぱんっ! それが寝台の下からヒュッと飛び出し、咲良の足元を払った。 「ひゃ!」 「おっ、おい!」 ぽすんっ! 体勢を崩した咲良を守弥が受け止めたのを確認すると、付喪神たちは素早くドアを閉めた。

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