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好き…。 好きで堪らない。 息が苦しくて、心の臓がぎゅうぎゅうする。 体のあちこちで血流がドクドクと逆巻いているような気がする。 手がふるふるして、足もかくかくしている。 どうして…? 守弥が好きで好きで堪らないから…。 『………っ』 向かい合う守弥も、同じように咲良を思ってくれているのが伝わってくるから…。 大好きという気持ちをぎゅうぎゅうと凝縮して落ち着こうとしても、愛しさがどんどん込み上げて止まらない…。 『噛み…たい…』 思いの丈を込めて守弥が咲良を噛んだように、自分も守弥の首筋に歯を当てたい。 歯を当て、舌を這わせたい…。 緋色の瞳が潤んで、長い睫毛がふるると揺れる。 『……に…』 「…?」 『…と…わに…』 「…ん」 ……永久に、深く。 守弥だけを愛し、愛されたい…。 「俺もそうだ、咲良」 「わたくしの願い、受け止めてくださりませ…」 「……ああ」 吐息が、更に甘く熱くなる。 「噛んで…くれるか?」 「…はい……っ」 咲良の左手が守弥の頬に触れる。 その手に守弥の手が重なる。 「…対の鬼さま、の、思し召しの、ままに…」 甘く熱い吐息が肌に当たり。 「……ん」 はく。 「………っ!」 ずくり。 体の芯を甘い衝撃が駆け上がる。 そろ。 噛んだ箇所をそうっと舌がなぞった。

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