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優しい表情と言うより、甘い表情。 目を細めて見上げてくる守弥に、胸がギュウッとなる。 「どこか痛いか?」 「……ふえ?」 「ここ何日か、少し物憂げな感じがしてたからな…」 「っ、……あっ、そ、それは、…その…っ」 何でもないと見せていたつもりなのに、悩んでいたのを見抜かれていたとは…。 かああっ、と顔が更に熱くなる。 「困ったことがあるなら、ちゃんと言え。 一人で解決出来そうにないなら、俺も手伝う」 「………っ」 「それとも、言いにくいことか?」 「……っ」 「向こうの世界の家族のことか?」 「いえ、違うのです」 「なら、きょうだいの誰かか?それとも、分家の誰かに無理難題をふっかけられたか?」 「いえ、……そ、その…」 「ん?」 無理矢理聞き出そうとする訳ではなく、咲良の反応を守弥は待つ。 上体を起こして息を整える。 キシキシと軋む胸に手をあてて、もう一度息を吸う。 「………わたくしは、………その…」 「………?」 「どうしても…足りない気がするのです…」 「………?」 苦しそうに話す咲良を気遣い、守弥は起き上がった。

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