387 / 668
・
「そんなに、……」
「………ふえ…?」
「そんなに、俺のことを…」
「はい…っ」
自分の存在全部に想いを満たしたいと言われて、守弥は目の前がクラリとした。
口づけに酔っている時に好きだと呟いてるだけでも充分なのに、まだ足りないと思っていたことが衝撃で。
「お前の中に息づく思いは、どれだけ深いんだ…」
「まだ、まだまだ足りないのです…っ」
ギュウッと抱き締めると、咲良も背中に回した腕に力を籠める。
「わたしは…加減が分かりませぬゆえ…」
「充分伝わってる。俺の方がまだまだだと思っていたのにな」
「いえ…。守弥さまがどれほど大事にして頂いているか…。
身代わりで嫁いだのに、甘噛みも、日々慈しんで頂いていることも、わたくしは…っ、わたくしは…っ、んう…」
チュ。
「んん…っ、…っ、ふあ…」
「…健気過ぎるんだ、お前は…っ」
「いけないのなら、直しまする…。
守弥さまが思い描くわたくしになりまするゆえ…っ」
「とっくに…」
「ん、んん…っ」
ぷっくりした唇を啄む。
これ以上聞いていたら我慢できなくなりそうで、何度も何度も啄む。
とっくに理想以上の花嫁になっていたのだ、咲良は。
守弥が気づかないようにしていただけで…。
ともだちにシェアしよう!