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「守弥さまがご誕生の砌にお持ちになっていた石だとうかがいました。 そのように大事な石を、わたくしが頂いて良いのでしょうか…?」 「大丈夫だよ。 鬼が期が熟した時に姫へ贈る習わしだからねぇ…。 婚約の証であり、万が一の事態が起こった時の守り石でもある。 紐を通して髪飾りにしたり、ネックレスみたいにしてもいいんだよ」 「紐を…?」 「穴を開けてね、紐を通すんだよ」 「そんな…っ、穴をあけるなどとんでもない…っ!」 守弥から貰った物に傷をつけるなど咲良には出来ない。 恋慕う相手を傷つけるような行為に思えて。 だが、常に手に持っている訳にもいかない。 「いいんだよ。 姫が常に身につけてるのが大事だからねぇ。 文字通り、肌身離さず」 「身につけて…。 袋に入れて御守りのようにしても良いのですか…?」 「いいよ。 咲良がいつも身につけてるならね」 「………っ、はい…っ」 それならば、咲良にも出来る。 どの布にしようか、どの紐を使おうか…。 地紋のある布に…? それとも、敢えて絹布に刺繍を施すべきか…。 想像するだけで心が沸き立った。

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