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ばあ様も式神も付喪神も、固唾を飲んで見守る。
いつ使った生地の端切れか、何色かも内緒の布選びだ。
「どれも手触りが良くて…」
神経を集中し、感覚を研ぎ澄ませる。
どれが自分の求めるものなのかさっぱり見当がつかないが、咲良は何度も手探りで確かめていく。
守弥がくれた、大事な石をくるむ布。
常に身につけておけるようなもの……。
「……………」
手で触れているだけでは、どうしても迷いが出てしまう。
両手で包むようにして、胸元に当ててみた。
ひとつ目。
トク…。
心が凪いだ。
ふたつ目。
とくん。
なんとなく、心が浮き立つ。
ひとつひとつの感触を確かめながら、咲良は選んでいく。
真剣に。
どくんっ!
「…………っ!」
胸元に当てた瞬間、大きく心臓が跳ねた。
「………っ、これは…っ?」
慌てて目隠しを外し、手に取った布を見る。
「さくらの心にビビっと来たのは、それなんだねぇ」
「はっ、はい…っ!」
咲良が選んだのは、初めて守弥のために誂えた衣裳の端切れであった。
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