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「わたくし…ちゃんと歩けますのに…」 「分かってる。 単に理由をつけて構いたいだけだからな」 クスクス笑い、寝台に咲良を降ろす。 「午前中も練習して、昼飯を食べた後も練習してだろう? 流石に頑張り過ぎてる。 少しは休まないと体がもたないぞ」 「うう…。 でも、もっと綺麗に舞いたいのです…」 「気持ちは分かるが、今は休め。 根を詰めてると、後々辛くなる」 「でも…っ、ひゃっ」 尚も言い募ろうとする咲良の額を、守弥は軽く押す。 それだけで、華奢な体はシーツの上に倒れた。 「これくらいで踏ん張りが利かない程度には疲れてる。 ……………あんまり無茶をするなら、甘噛みするぞ」 「…………っ! そっ、それは…っ」 それは、咲良が最も避けたいことだ。 対の噛みを交わしてから、守弥に首筋や耳殻をやわやわと噛まれると咲良の体は熱を帯びるようになっていた。 「お前が熱を帯びれば、俺も箍が外れる」 「………っ!」 熱を帯びた白磁の肌から立ち上る香りは、ただ一人の鬼を狂わせる。 恋慕の情を滾らせ、姫の熱を煽り、囀りを引き出そうとする。 「宵闇の中ならまだしも、日も高い内からでは式神や付喪神にもお前の小夜啼きが丸聞こえになるな…」 「………っ、うう…」 「俺は一向にかまわない。 お前のあられもない姿を見れて役得だしな。 どうする?おとなしく昼寝をするか、俺に噛まれるか」 「う…、うう…。 おとなしくいたしまする…」 「よし」 悪戯っぽい笑みを浮かべ、守弥は咲良の袿を床に滑り落とした。

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