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「界渡りの姫がもたらすものは大きい。 欠けた魂を補っても余りあるはず」 「………」 「何度かお会いしましたが、守弥どのご自身にも変化が現れておる様子。 境界の裂け目を修復することに不自由無い段階へ進まれているとのこと。 ならば、廃嫡の取り消しを我ら氏子全員の総意で申し出ることもあるとお考えいただきたい」 「な…っ」 氏子総代の言葉は重い。 大きな神社の分家と言えども、反論は許されない。 今までの守弥への態度も合わせてキツい追求をすると言い渡されたのだと知り、史朗の父は黙るしかなかった。 花吹雪の中、二人は戻ってきた。 「守弥さま…、あの花吹雪は…?」 「夏祭りの時と同じ、ご祭神さまのご祝儀だと思ったんだが…」 「大盤振る舞い過ぎませぬか…?」 「………確かに…」 触れる瞬間に消えるのは、実体がないからだ。 人にあらざるもののなす事であるのは間違いない。 「ばあ様が慌てて無いから、大丈夫だと思うが…」 「………」 吉兆ならば良い。 怖いことの前触れでなければ良いのだ。 逸る胸を押さえて守弥を見上げる。 「大丈夫。 俺が付いてるから…、な?」 「は、はい…」 ギュウギュウしてもらえば、気持ちが落ち着く。 そう思った瞬間、異変が起きた。 「咲…良……、…………ぐぅ…っ、………かはっ」 「守弥さまっ!?」 ぐらりと守弥が体勢を崩し、咲良とともに床へ崩れる。 「…に、兄さんっ!?」 「守弥!?」 「守弥さま!……っ、…っ!」 胸元を押さえて守弥が肩で息をする。 普通ではない様子に、咲良も血の気が引いていく。 「まさか…っ、時雨!この部屋を遮断しておくれ!」 「分かった!」 「……っ、……っ」 キリキリ痛む胸を押さえて守弥に手を伸ばしながら、咲良も床に倒れ込んだ。

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