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◆◇◆◇◆
咲良は夢を見ていた。
不思議な…不思議な夢を。
「………」
「気がついた?」
「…時雨さま…?」
辺りを見渡すが、時雨と咲良以外見当たらない。
「守弥さまは…?
守弥さまは何処でございますか…?」
「隣の部屋にいる」
「………っ」
「今は安定してるから、ね?ちょっとだけ、話をしなきゃいけないんだ」
「……………」
何が起ころうとしているのか。
時雨は訥々(とつとつ)と話し始めた。
千年以上続く奥宮と外宮。
その祭神である鬼の血を継ぐ男子が、異界から姫を迎える姫乞いの儀。
姫を迎えて一年以内に心を通じ合わせて夫婦になるのが決まり。
だが。
そもそもその姫乞いの儀自体に成功例がないことを。
「成功例が…無い…!?
ならば、なにゆえ守弥さまは…!」
「石がね…変化したんだ」
「石………、まさか、この、対の…」
「そう。咲良に預けた石のことだよ」
「………石が変化したことで守弥さまが界を渡られたのはわかりました。
では、成功例がないというのは…。
どうなるのでございますか…っ」
「………どちらかが、石になるんだ」
「……………っ、石に…!?」
「そう。
内包する力が低い方が石になる。
だから…」
石になるのは兄さんのほう。
時雨は、感情を抑えながら呟いた。
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