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「…守弥さまは…ご自分が石になる公算が高いのをご承知の上で、わたくしを…?」
「うん。
兄さんはね、生まれた時から魂の一部が欠けていてね…。
力の制御がうまくいかなくて、廃嫡されたんだ」
「魂の一部が…」
「うん。
家族には優しいけど、他人には…感情が薄くてね。
何人かとお付き合いもしたけど、うまくいかなかった。
でも、兄さんは…、心の底から好きだって思える誰かをずっと求めてた」
「……………」
「ん。気づいてるよね。咲良の事だって」
「……………っ、………っ」
涙がボロボロとこぼれ落ちる。
魂の一部が欠けていて自分が石になるとわかっていたなら、言って欲しかった。
唯一無二だというなら、共にずっと在るために、策を講じようと言って欲しかった。
「兄さんが何故打ち明けなかったかって思うかも知れない。
姫乞いの掟の一つなんだ。
石の試練の事を話してはいけないって。
それに、自分が生きるために咲良を利用するのだけは嫌だったんだと思うんだ」
「わたくしが利用されても良いと言っても…」
「兄さんは首を縦に振らないだろうね。
あの火傷の件のように、身代わりをしかねないから…」
「なにゆえに…!」
「好きで好きで好きで、仕方ないから…だよ。
石になった側の残りの命数は、対に振り分けられる」
「………っ!」
「ずっと、お姉ちゃんやご両親の身代わりをしてきたでしょ?
残りの寿命が少ない咲良に、振り分けようと思ったかもしれないね…」
守弥が頑として告げなかったのはそれか。
命数が少ない咲良に、天寿を全うせよと…。
「……………!
そんな…っ、そのような…っ、守弥さまがいらっしゃらない世界に、わたくしの居場所など……っ、生きている意味など…、意味などありませぬ…!」
「咲良!」
部屋を飛び出し、守弥のいる部屋へ飛び込む。
「さくら…」
ばあ様の傍らに横たわる守弥。
石化は、既に始まっていた…。
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