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石になる術が向かうのは、守弥の心臓だ。
両手を当てて、到達するのを待つ。
黒い。
黒くて怖いと思う。
沢山の姫と鬼の命を断ってきた術。
『怖い…、でも…、わたくしには出来る筈…』
ザワザワと肌が粟立つ。
守弥に襲いかかる試練を、自らの命と交換する。
怖くても、やるのだ。
「さく…ら…?」
「喋っては…なりませぬ…よ」
怖さなど、振り切ればいい。
「やめろ…咲良…」
「やめませぬ…っ」
『やめろ……か…ら…』
『やめませぬ………り…こさま…』
咲良の手に、ほっそりした手が重なる。
「あなたは…」
『わたしは…過去のあなた…。
あなたは、わたくしの未来…。
手伝うてくださいませ。
石化の術が向かう場所に潜む、黒い黒い残滓を!』
「はい…っ!」
朧気な姿の少女に咲良はシンクロしていく。
「やめろ…咲良…!」
『やめてくれ、香久良…!』
ザワザワと音を立てて迫る術。
残滓に意識を集中し、タイミングを待つ。
『到達と同時に残滓と術を抜き取るのです』
「はい…っ!」
『やめろ…!』
「咲良!」
ザワザワザワ…っ!
ぞぞぞぞ…!
『もうすぐ……っ、今ですっ!』
『やめろおおおおおお…っ!』
黒い残滓に食らいつく術を引き抜く。
同時に、守弥から光が弾き飛ばされる。
「…………っ、逃がしませぬ!」
「やめろ、咲良…!」
引き抜いた二つの術を絡めとり、咲良は自らの胸元へズブリと埋めた。
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