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遠くへ。 遠くへ行かなければ。 守弥に気づかれない場所へ…。 体内の術を引っ張り出されてしまう。 守弥への想いも、怖さも振り切るように走る。 だが。 たどり着くのは、守弥と訪れた場所ばかり。 「わたくしの馬鹿! もっと…、違う場所へ行かなければいけないのに…!」 空を切り、狭間を越え、一人になれる場所を咲良は探し続けた。 その頃。 時雨は床に突っ伏していた。 とうとう、来てしまった試練。 守弥の石化は止められない。 どうにもならない。 打ちひしがれる咲良をどうしたものかと。 その思考が、一瞬途切れた。 しゃあ……ぁぁぁ……りぃ……ぃんっ。 「………?いまの……、咲良?」 微かに感じたのは、咲良の術の気配。 「………まさか!?」 隣の部屋に駆け込む。 静かに横たわる守弥と、硬直するようにすわるばあ様だけがいた。 「ばあ様っ、何があった訳!?」 額につけられた苻を外す。 「………?…………!さくら!」 辺りを見回しても、姿はない。 「さくら!返事をしておくれ!」 応えは返らない。 「さくら!」 床に落ちた袿。 その近くに、空が切られた跡だけがあった。

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