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◆◇◆◇◆
時間を少し遡る。
哀しくて不思議な夢を見た。
目が覚めた瞬間、自分の中のなにかが違うと守弥は感じた。
全てが補完されて、視界がはっきりと見えるかのようで。
「守弥、さくらが…っ、さくらが…っ」
「兄さん!」
床に落ちた袿が、夢のすべてが真実だと物語る。
咲良が少女の幻影と共に、石化の術を引き抜き、自らに埋めた事を。
咲良の中にあった何かが守弥の中に落ち、欠けた魂の核が充填された事を。
「………行き先はわかってる」
完全に閉じきっていない裂け目を抉じ開け、狭間へ足を踏み入れる。
「絶対に、捕まえる!」
狭間から狭間へ、守弥は咲良を追った。
ビーチグラスを拾った海辺。
水族館。
祖母の店。
………道の駅。
どれも。
どこも守弥と行った場所ばかり。
「全部俺と行った場所じゃないか!咲良!」
知らず知らずに胸と目が熱くなる。
守弥を深く愛したまま、死のうとするなど許さない。
常に側に在らねば生きていけない。
それは守弥だけではない。
家族全員が咲良なしではいられないのに…!
身代わりに石になどさせない。
守弥に残りの寿命を受け渡して死ぬなど。
絶対にさせないと心に固く決め、狭間から狭間を抜けて行った。
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