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微かに残る咲良の痕跡。 巧妙に消しても、今の守弥には分かる。 追って、追って、追って。 漸くたどり着いたのは、奥宮の禁域。 「咲良!何処だ!」 声を張り上げて走る。 確証はないけれど、跳んだ先は禁域に間違いない。 「咲良!咲良っ!」 必死で叫ぶと、なにかが弾け飛んだ音がした。 「………!?」 葉を揺らし、梢を鳴らし、風が吹き抜けてくる。 『みつけてあげて』 『まだ、まにあう』 ひらひらと舞う花びらに混じり、語りかけてくる声。 『もりやどの』 『ひめはこちらに』 導かれるままに疾走する。 「咲良!」 『もり…や…さ…』 「咲良!」 漸く見つけた。 嘆きの堂の中に横たわる咲良を…。

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