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異変を察知した付喪神から連絡を受けたばあ様と時雨が駆けつけたときには、石となった咲良から体温が完全に失われていた。
風の術の力も、咲良自身の余命も受け継いだ守弥の慟哭は深く…頑として離れようとしなかった。
そこで、ばあ様は初めて守弥に告げた。
咲良が永い間、欠けた魂の核を抱いて来たこと。
転生を繰り返す中で呪詛に染まった核を浄化してきたこと。
今生では、家族の災難を引き受けることで生じた代償と呪詛を相殺してきたことを…。
本人も何故そうするかは気づいてはいなかったはず。
無意識にしていたのだろう、と…。
「……………っ」
両親もきょうだいたちも、式神も、付喪神たちも泣いた。
泣いて、泣いて、泣いて。
涙が涸れてしまうほどに泣いても、心に空いた穴は塞がりようがない。
戻らない咲良を思い、涙は止まらなかった。
「こうなるのが分かっていたから、言えなかったんだ…」
石像となって言葉を返してくれないのは重々分かっていても、言い訳ばかりが口から出る。
己の不甲斐なさに、怒りすら覚えて。
食事も喉を通らないが、無理やり押し込む。
魂魄になった咲良に、これ以上心配をかけぬように。
そして。
仕事をしている時は致し方ないが、休憩時間や寝るときに、守弥は咲良の傍らにいることにした。
出来る限り言葉をかけるようにし、夜は隣で眠る。
石化の試練は覆らないのかもしれないが、伴侶の自分が諦めてしまっては…。
そう思い、守弥は7日目の朝に決意を口にした。
「何年でも、何十年でも待つ」と…。
誰もが諦めを口にしたが、守弥の決意は固かった…。
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