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「おや、まあ…。
見事に石になって」
それが、咲良を見ての一言であった。
「……?」
「お?お前、覚えがあるな~」
「えっと、名前……っ、んと…」
「よし…、違うな…、んとな、えっと…」
「よし、じゃなくて、や……、や…、やす…、恭仁(やすひと)!」
「恭仁だ、んだ!恭仁~!」
「暫く見なかったな」
「何処行ってたんだ?」
「久しぶりだな~」
付喪神たちがきゃわきゃわと話しかける。
「お久しぶりです。
ちょっと近くて遠い所に行ってたんですよ。
愛弟子がちょっと困ったことになってるようで、お邪魔しました」
「………愛弟子?」
「さくらが?」
「ええ」
にっこり笑い、扇子を懐に仕舞う。
「多分やらかすだろうと思ってましたが、思った以上に早かったので驚きました。
知らせの様なものは届いても、一向に魂魄が来る気配もなく…」
「ほえ?」
「さくら、そっちに行ってないのか?」
「ええ。
鬼にバリバリと食べられたら、魂魄になって帰ってきますと言ってたのに、です」
咲良の顔を覗き込み、ふむふむと頷く。
「向こうに帰ってない…?」
「ええ。
先程も言いましたが、知らせのようなものは届いてます。
でも、待てど暮らせど魂魄はまったく」
「…………知らせ?」
追いかけてきた守弥とばあ様も、目をパチクリさせた。
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