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咲良の姿をしているが、咲良ではない。 分かってはいる。 片ひざをついたまま、石になった咲良の額に自らの額を当てた。 「ちょっと出掛けてくる。 おとなしく待っててくれよ? ………それから、これを預かっといてくれ」 ポケットから取り出した物をサッと薬指に嵌める。 『ちょ!あれ、指輪!』 『さりげに嵌めたぞ!』 『ふおおおお!』 後の事を頼むと言う意味で付喪神たちに視線を送るが、それどころではない。 萌え転がっている。 致し方なくばあ様を見れば、これもまた指輪を嵌めた咲良を激写していた。 「………。 で、何をすればいい?」 「輪廻の輪の中を走って来てください。 香久良から咲良さんまでの流れを辿り、痕跡や零れた霊力の欠片等を回収してきて貰うのが目的です」 「…わかった。 拾った痕跡は、この咲…童子に渡せばいいんだな?」 「そういうことです。 あなたが起源の護矢比古と繋がっている今なら、まだ間に合うはず」 「やってみる…、いや、やってみます。 道を開いてもらえますか」 「ええ」 請け負う宮司に頷き、傍らに立つ童子と視線を合わせる。 「俺の大事な対を取り戻す。手伝ってくれ」 『はいっ』 「取りあえず、俺にしっかり掴まってくれるか」 『はっ、はいっ』 軽く前傾姿勢になった守弥の首に腕を回す。 奇しくも、姫乞いの儀の際に迎えに行った帰りの時と同じ体勢だ。 一つ息をつく。 空気の流れが変わるのを感じながら、守弥は両足で立ち軽く踏ん張る。 「ありがとう、………夜刀比古」 「いいえ。元はといえば、私の焼きもち…いえ、あなたに対するつまらない嫉妬が引き起こしたこと。 香久良の散らばった痕跡を、どうか…」 「頑張ってくる。咲良が逃げないように見ていてくれ」 「ええ。頼みましたよ」 「ああ」 足元で巻いた風の渦が、ゆっくりと上に向く。 守弥と童子を取り囲むように吹いて、球体を象った。 「風よ、巡り巡りて起源の娘の元へ…」 しゃああああんっ! 風の球体と空気が共鳴した瞬間、境界が口を開けた。

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