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「起源の香久良の元へ送ります。
どうか無事で」
「ああ」
ゆっくりと視界が塞がっていく。
風の球体が境界を抜けて、輪廻の輪の下の方へと滑っていっているのだ。
『輪廻の輪は螺旋のような形をしております。
香久良さんのところまで滑りますので、暫くお待ち下さい』
「ああ」
咲良のようで咲良ではない。
身代わり童子と分かっていても、不思議な感覚が抜けない守弥だ。
「咲良の痕跡を追うのはわかった。
お前に渡すのも。
痕跡自体はどんな形をしているんだ?」
『痕跡というのは、人それぞれなのだそうです。
硝子の欠片のようであったり、花びらのようであったり』
「人……それぞれ…」
『大丈夫です。
ぼくが咲良さんの気配を持っているので、香久良さんと最初に共鳴りをします。
そうすれば、ほのかに光ると主さまが…』
「……………そう…か」
分かるならいい。
一抹の不安はあるが、やれることをするだけだ。
『………香久良さんまで遡るということは、守弥さんご自身の過去を遡るようなものです。
つらい体験を更に追体験する形になりますが、そこは不安には…?』
「自分のことは大丈夫、………だと思う。
そこはなんとかなる。俺が輪廻を遡ることで過去を改変したりは出来ないんだろう?」
『はい。出来たとしても、その場で守弥さんの存在そのものが消されてしまいます』
「………わかった。傍観者に徹する」
咲良を取り戻す為に輪廻を遡ることにしたのに、守弥が消されては意味がない。
ふむふむと頷き、ゆっくりとひとつ息をついた。
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