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「なんて危ないことを…!」
「あぶなくなんかないわ。いつもしてることだもの」
咎めたてる護矢比古を女の子は見上げた。
「薬草はねケチったらだめ。
決まった分を使わないと効き目が薄いの」
「………え?」
「あなたの近くにいる人…、薬草の効き目が良くないのでしょ?
大事な薬草だからしんぼうしてるのね。
でも、効き目がよくないのは、薄いからよ」
「………でも…」
「こっちに来て。
わたしのわけてあげる」
「え?」
明らかに護矢比古より年下の女の子は、ぐいぐいと手を引いて駆け出す。
「だめだよ、こっちは奥の奥…、許しもないのに入ったら…」
「構わないの。わたしがいいんだもの!」
生け垣を抜けて、さらに奥の囲いの中へ。
そこには、たくさんの薬草が植えられていた。
「具合が良くないのは、あなたの大事なひと?」
「あ、ああ」
「薬草は、どのくらいずつ使うの?」
「えっと、……このくらい」
「………やっぱりね。少なすぎる。
苦しいのは喉?鼻は?」
「喉が痛いのと、胸の辺りも。
夜は息がビュウビュウする。鼻はそんなに…」
「んん…。
それじゃあ、これと、これと、これを合わせて…。
朝と夕方に飲むといいわ。
量は…、一回分ずつで布にわけてあげる。
絶対ほどいて少なくしたらだめ!それから、勿体ないからって乾かして何度も使うのもだめ!」
「………!」
まるで見ていたかのように言い当てる。
たしかに、母は父から届けられた薬草を少しずつ使っている。
しかも、煎じた物を乾かして再び煮出していた。
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