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「咲良は、起源の時も家族と縁が薄かったんだな…」 『そうですね…。 今生で家族に降りかかるものを背負いまくったのも、この事が起因しています。 家族と暮らしたい。 注連縄の外へ出たい。 でも、自由になりたいと言ってはならないし、望んではいけないからこその孤独、寂しさ、喪失感。 そういった、空虚、虚無を埋めたくて必死になっていた…。 方向性は間違えていますが、必要とされていたい願いの強さでもあります』 「………」 宮司の声に一瞬言葉が詰まる。 「もしかして、うちの両親やきょうだいたちが猫っ可愛がりするのを戸惑ったのも…」 『多分、過去の事が関係していると思いますね』 「そうか…」 咲良としてのものや、香久良としてのもの、それが複雑に絡まってのことか。 ならば、咲良までの痕跡を拾って物事を解決するまで。 「石化が解けたら、べったべたに甘やかす」 『是非ともそうしてください』 戻れるきっかけを拾い、何年かかっても咲良を取り戻す。 改めて気持ちを引き締める。 舞い上がり、降りしきる花々。 その中に混じって零れる光を拾い、香久良の成長を追う。 輪廻の輪の中で季節はめぐる。 香久良は15歳になっていた。

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