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一方、護矢比古は。 今日も森や山で仕留めた獲物を里に届けていた。 肉は家々に分配され、皮は様々な道具箱に、骨や牙は矢じりに加工されて里全体の役に立つのだ。 里で狩りの名手と認められ始めた護矢比古。 外腹とはいえ、長の息子には変わりない。 背が高く、程好くついた筋肉が綺麗で、涼やかな目元の若者になり、里に住む娘たちにとって夜刀比古に次ぐ婿がねと目されるようになってきた。 長の妻の悋気が怖くて声高には言わないものの、病弱な夜刀比古よりも狩りの名手の護矢比古の方が次期長に相応しいのではないかと噂も立ち始めている。 「俺はそのつもりはないよ」 謎かけをされる度に否定をし、余程の事がなければ里の中まで足を踏み入れてはいない。 いつかは所帯を持つことになるだろうが、争いやいさかいとは無縁でひっそり暮らして行ければいい。 これからも森の向こうに追いやられた母に危害が及ばないようにする為だ。 「外れとはいえ、里の敷地に暮らせているだけで十分」 母と二人の暮らしに必要な家と畑があればいい。 数々の縁談にしても、決めた相手はいないが未だ考えてはいないと返している。 いつか外に出る事を許されたら、香久良を迎え入れてやりたいと思っているからだ。 家族を知らない分、大事にしてやれたなら。 本人はそのつもりでも、周りはそうはいかない。 事態は、少しずつ動き始めていた…。

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