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◆◇◆◇◆ 「香久良は社から外に出てみたいか?」 「…………え…?」 星読みの結果を貰いに来た夜刀比古の言葉に、香久良は一瞬言葉を失った。 「出てみたいわ。 絶対に許されないけれど…」 「俺と一緒にでも?」 「禁域から一歩でも出れば、直ぐに知られてしまうもの」 何度か護矢比古のいるところへ行こうとしたことがあるが、悉く大人たちにバレて閉じ込められた。 「……自由になりたいなら、うちの父親に話をしてみようか?」 「………え?」 夜刀比古の言葉は、思いがけないものであった。 「でも…、夜刀比古は香久夜の許嫁なのよね…? 前にあなたは獣腹の子供は喜ばれないと言ったわ。 わたしがここから出たとして、里の中に良からぬ事が起こったりしないの?」 「それは…」 「都合がよくないのではないの…?」 「…………」 夜刀比古が口ごもる。 「物事には決まりがあるわ。 それを無理に通すと、どこかに無理が来る。 外に出て良いことがないのなら、わたしはここにいるしかない」 「…………」 「わたしが外に出ないと、夜刀比古が困る訳ではないでしょ?」 「……………が…ないんだ」 「………?夜刀比古?」 「あっ、いや、いいんだ。 なんとなく思ったから…聞いただけで…」 「そう…?」 小首を傾げる香久良に、夜刀比古は曖昧に答える。 「今日は帰るよ。 ごめんな、時間を取らせてしまった」 「大丈夫よ。ありがとう」 「じゃ、また…」 踵をかえして戻っていくのを見送り、香久良はもう一度小首を傾げる。 気まぐれに現れる夜刀比古だが、だんだん表情が曇っているように感じるのだ。 なにが原因なのかは知らないが、心がザワザワするような気がして胸に手を当てる。 その当時の里では、次期長を夜刀比古と護矢比古のどちらにするかで意見がまっ二つになっていたのだ。

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