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◆◇◆◇◆
数日後。
薬草園に護矢比古が訪ねて来た。
「ごめん、なかなか来れなくて」
「ううん。
忙しいときは仕方ないから…」
低木の下に出来た空間。
二人だけの内緒の場所に並んで座る。
「どうしたの?凄く疲れた顔をして」
「……どうってことない。
香久良は…?何か困ったことはないか?」
「大丈夫。わたしはなにも…」
「なら、いい…」
ならいいと言いながらも、護矢比古の表情は冴えない。
何か思い悩む何かがあるのだろうか。
香久良は次の言葉を待つ。
「香久良」
「ん?」
「もし…、許されるなら、俺と里を出ないか?」
「え………?」
思いがけない言葉が出た。
「直ぐにではないかもしれない。
うまく収まれば無茶な方法はとらないけれど、俺と香久良と母さんの三人で他の里に身を寄せようと思ってる。
ずっと暮らしてきた社の外に出るだけでも不安かもしれない。
でも、頭の片隅に置いていてくれないか?」
「え、…ええ」
自分の中で特別な存在になりつつある護矢比古と一緒に居られるなら、それは願ってもないことだ。
「護矢比古と…行けるなら…わたしは…」
「来てくれるか?」
「ええ。
一緒に…同じ家に…?」
「ああ。
一緒に暮らせる」
とくり。
胸が高鳴った。
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