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第5話
朝のいつもの時間、いつもの電車に乗って通学する。
ぼんやりと流れる景色を眺めながら、学校前の最寄り駅まで運ばれる。
改札を出て真っ直ぐ歩くと、すぐに高校の正門が見える。
門へ吸い込まれる生徒たちと混ざるように、流れに乗って歩き続けた。
そうやって1日がここから始まる。
「おはよ」
後ろから声をかけられる。振り向くと犬塚が手を振っていた。
「おはよう、犬塚」
学校内での俺と犬塚の会話はこれだけ。
犬塚はいつも机に突っ伏して寝ているし、俺は黒板に書かれた汚い文字をノートに書き取るのに忙しい。
それも、放課後までの暇潰しだ。
ほんの数日前まで、家に帰ってタバコを吸ってデトックスすることしか考えていなかったのに、今では犬塚と同じ電車で帰り俺の家に連れ込んで、ふたりでちゃちゃっとシャワーを浴びて、猿のようにセックスをするという楽しみを見つけてしまった。。
犬塚とセフレになって初めてのごみ捨ての日、部屋のゴミ箱が汚れたティッシュと使用済みゴムで溢れていたときはさすがに驚いた。
もちろん今日の放課後も、犬塚を部屋に連れ込んでセックスをする。
「黒崎のセックス好きだなあ」
犬塚の腰を掴み、バックから挿入しようとした瞬間だった。
「はあ?」
「セックスっつうか、黒埼のちんぽってさ、すっげえイイトコに当たるんだよ。からだの相性マジ最高。黒崎とセフレになってよかった」
「そう、かよ」
「ほら……入れろよ、早く」
犬塚が尻を突き出す。
濃い赤に縁取られた先はきれいなピンク色をしている。そんな犬塚の入り口にゴムを被せた尖端を当てると、付けすぎたローションのせいで、粘ついた水音が響く。
重力に従い垂れ落ちるローションを中へ押し込むように挿入した。
圧し殺したような喘ぎのあとは、甘い喘ぎへ変わる。
犬塚の中から溢れ出すローションが俺の陰嚢に垂れる。ピストンの度に俺の陰嚢と犬塚の蟻の戸渡部分とがぶつかり糸を引く。
「んあっ、あっ……あはっ、黒崎の、タマ当たってくすぐってぇ」
「そこかよ……ほら、ここが、いいんだろっ!」
「ひ、ンンッあ、そこ、ヤバ……いイッ」
バックから犬塚の腹部をかかえ、俺の胸に抱き寄せた。犬塚を貫いたまま、俺の太ももに座らせる。いわゆる、背面座位というやつだ。
「ふか、いぃ……くろさきぃッ!」
少し抜けかけたものが急に奥へと貫いたためか、犬塚は甘い悲鳴を上げた。
犬塚の顎を持ち上げ、後ろからキスをする。
体勢が悪く、舌を絡めると互いの舌が頬や口の端に当たってしまう。
セックスするだけの友人なんて、本当に存在するのだろうか。
俺は犬塚とセックスやキスをするだけで、こんなにも好きが溢れるのに。犬塚を手放したくない。
犬塚はセックスしないと、俺以外のところへ行きそうだった。
「おい、黒崎……もっと」
俺の胸に犬塚の背中がぴったりとくっつく。犬塚の柔らかな髪が俺の顎にふわふわと当たる。
子どもが大きなぬいぐるみを抱っこするみたいに、犬塚を抱き締めた。
「なんだよ、黒崎……ほら、ガンガン突けよ」
「犬塚……好きだよ」
「え? アッあぅ……んんあっ!」
どさくさ紛れの告白をうやむやにするように、いつものように腰を動かす。
とたんにからだの力が抜けてぐったりとする犬塚から一旦引き抜き、犬塚をなんとかベットに寝かせ両足を担いで挿入した。
「アッ……ひぅっ、いく、いくぅ……!」
「ほら、イケよ……」
「あ、ぐ……うぅぅあっ、あ……ッ!」
ぴゅ、ぴゅぴゅ。俺の胸元に犬塚の精液が飛んだ。
それを見届けるとなんだか安心し、とたんに中心から熱くなる。そして堪えられなくなって犬塚のナカに放った。
犬塚を繋ぎ止めるためのセックスが終わり、床に落としていた部屋着のTシャツを着る。犬塚はまだ汗の滲んだからだでベッドに寝ころがっている。俺はベランダに出てタバコに火をつけた。
「それおいしい?」
ヨタヨタと全裸の犬塚が窓から半身を乗り出す。
「いや、おいしいわけじゃないけど」
「でも高いじゃんか、タバコって。それでも吸うんなら、おいしいのかなって」
「まあ、安くはない、けど」
「ね、タバコってどんな味?」
「……吸ってみる?」
犬塚に吸いかけのタバコを差し出す。
犬塚がそれを受け取って、俺の真似をするように人差し指と中指で挟み、フィルターを口許へ持っていく。少し口をつけたところですぐにやめると、俺にタバコを返した。
「やめとく……」
「嫌だった?」
犬塚は返事はせず部屋の中へ引っ込んだ。
犬塚が口をつけたフィルターを咥えると「うわ、俺の手すっげぇタバコの臭いする!」と部屋の中から犬塚の大声が聞こえた。
短くなったタバコを空缶に落とし部屋に戻る。犬塚は風呂へ行くところだった。
「なあ、こんなこと聞くのアレだけど、他のセフレって……どうなん?」
「どうって、何が?」
「いや、なんか……あの日から、俺と毎日ヤッてんじゃん? 他にもセフレいるっぽかったし、いいんかなーって」
「……いいんだよ」
犬塚は笑って言った。そして、それ以上はなにも言わなかった。
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