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第9話
※
柔らかなベッドの上に、俺と犬塚は裸で抱き合っている。
どうしてだか分からないけど、どうしようもないくらい幸せで、満ち足りた気分だ。ちょっとした脱力感が、ふわふわして気持ちいい。犬塚とふたりで愛し合っているからだろうか。きっとそうだろう。
犬塚の柔らかな穴の中に突き入れて、夢中で腰を振る。
「ごめん、黒崎……俺が、巻き込んだんだ」
腕の中で悶え喘ぎながら、その合間に犬塚が言った。
「なに言ってんだよ、犬塚がいたら、俺はそれでいいよ」
「うん、俺も、黒崎がいたら、それでいいや」
犬塚が俺を抱き締める。
「だから……黒崎、ごめんな」
犬塚が泣いていた。
「犬塚、泣かないでくれよ。大丈夫、俺が守るから。な?」
俺は、犬塚を悲しませることをしただろうか。
ぐにゃりと視界がゆがんだその一瞬で、まるで眠りから覚めたように意識が覚醒する。
目の前には俺にすがりついてガクガクと震える犬塚がいた。
「いぬつか……?」
「カット!」
見知らぬ声が急に響き、びくりと体が跳ねた。
「あちゃー、リョータくんちょっとキメ過ぎたかなぁ……1回ストップね。ハハ、ヒカルくん、鼻の頭カブれちゃってるね。ラッシュ着いちゃったかな?」
思考がついていかない。周りを見渡せば知らない男がそいつを含めて3人いた。
「誰、なに……俺、どうして。逃げてたんだ、犬塚と」
「あれ、ヒカルくんお薬キメすぎて忘れたの? 今、きみらのデビュービデオの撮影してるんじゃない」
さっきから話をしている、あご髭の男が笑いながら言った。こんな男、俺は知らない。
「デビュー……って、なに?」
「現役高校生のラブラブセックスビデオでデビューするんでしょう? 今日はそのパートを撮って、明日はリョータくんが強姦されているところを、彼氏のヒカルくんがお預けされてぇー、無理矢理チンポを扱かれてリョータくんに顔射する! ところでヒカルくんのアナルってまだ処女だよね? いつかヒカルくんの処女喪失フィルムも撮ろうね」
なんでもないことの様に、あご髭の男が俺の肩に手を置いて言った。その手がやたらと熱く、気分が悪くなる。
「あ、リョータくん平気っぽいです! ヒカルくんのチンポが気持ち良すぎただけだって」
小さな部屋の中に大きな笑いが起こった。
「ははっ妬けるー、ラブラブかよ。あ、ヒカルくんチンコ萎えちゃったね。しゃぶってあげよっか」
あご髭が俺のちんこをひょいっとつまみ上げる。
「あっ、俺がする……!」
ふらふらと犬塚が俺の前にやってきたかと思うと、俺の両足の間に跪いてあご髭の手を払い除けた。
「ごめんねー。リョータくんは本当にヒカルくんが好きなんだねぇ」
あご髭は周りの男たちと合流し、バタバタと作業をはじめだした。
「犬塚、なんなんだよ、これ」
「ごめん、黒崎……でも、黒崎となら、俺、頑張れるからさ」
そう言って、犬塚が俺のをしゃぶりながら笑った。
「大丈夫、黒崎は俺が守るから。ね?」
「じゃあ、はじめよっか」
横から伸びてきた手に茶色の小瓶が握られていた。その臭いを嗅がされると、またふわふわとした気持ちいい脱力感が襲ってきた。
「リョータくんもラッシュいる?」
犬塚はその言葉に頷いて、小瓶に顔を近付けて吸い込んでいた。
「じゃあ、さっきのところから撮るからね」
犬塚がベッドに横になる。腕を広げて俺をそこへ誘い込む。
「黒崎、大丈夫だよ。逃げられなかったけど、今は、ふたりだけだから」
「ほか、ひと、いるのに?」
「セックスしてるときは、俺と黒崎はふたりきりなんだよ?」
そうか、今は犬塚とふたりでセックスしてるんだ。
「一気に俺のナカに挿入れてよ、黒崎のチンコ……いつもみたいに」
犬塚が笑っていた。
犬塚が笑っているなら、それでいい。
「犬塚……ッ!」
ぐちゅ、と音を立てて犬塚の中へ入り込む。
「ひ、あっ! ああっ! くろ、さきぃ!」
いつもの、犬塚が好きなところを突いてやると、甘く声を上げる。
何度も何度もそこを突き上げると、犬塚の先端から精液が溢れる。
「好きだ、犬塚……あ、くゥッ!」
そのまま犬塚の中に俺も吐き出した。
今までにないくらい信じられないほど気持ちがよくて、出し切った後は力が入らなかった。そのまま俺は犬塚に覆いかぶさるように倒れこんだ。
「黒崎と一緒で、俺、幸せだよ。黒崎、ごめんね、好きだよ」
遠くで犬塚の声を聞きながら目を閉じた。汗ばんだ犬塚の腕が背中に回った感覚を最後に、俺は眠りに落ちた。
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