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王子様の本性
「うっ、わ……!」
それでも倒れた方は俺のベッドで痛くもなく怪我なんてあるわけがない。プラス、なにか温かいものに包まれたような気がするが、無論、
「おかえり、智志君」
「……ッ」
温かいものに包まれた、というより王司の腕の中に俺は倒れたってことだ。
「おそかったね、誰かの部屋に泊まるのは校則違反だよ?」
耳元で囁くように喋る王司。
「は、はは……す、まん……」
「俺さみしくて智志君のベッドで寝ちゃったよ」
鳥肌やべぇ……。
左耳に王司の口がくっつきそうなぐらいの距離と吐息混じりで囁いてくるからどうしたものか。……俺にはなにも出来ない。
俺はこのまま襲われてしまうのだろうか。このバリタチらしい副会長に俺は掘られるのか……。
「つい、我慢出来なくて自慰しちゃったんだけど……」
「……へ、へぇ、」
息さえしてるかわからない今、やっぱ木下に従うべきだったか?
でも俺を襲うだなんて想像出来なかったわけだし……けど、現実はこうだ。
全裸で包み隠さず王司自身のモノを見てしまったさっき、全裸の王司に腕を掴まれて倒れたが全裸のまま抱き締められてる。
全裸でなんの雰囲気もないまま耳元でなんか囁き喋ってる王司は全裸。あれ、俺全裸言い過ぎじゃないか?
でも王司 雅也は全裸なんだからしかたない。気のせいだといいんだけど、腰辺りになにかが当たってるような、そうでもないような……。
「ねぇ、今までどこに行ってたの?松村君の部屋じゃないよね?会長がいるんだから、入れるわけがない……」
あ、そうなんだ……。会長様がいると入れないんだ……つか、耳元やめないか?
なんて言えたら、どんなに楽か。
言えたらこんな体勢じゃなくてちゃんとこいつに服着せて、それからメシ食わせて、んで話し合いしようと思うんだけどなぁ……。
「意外と智志君は酷いところあるよね、そこもイイんだけど。ネ」
「ンっ、ちょ……ぉぃッ」
「ふふっ、いい匂いする。でもシャンプー……シャワー浴びてきたの?」
囁かれていた右耳を遠慮なく舐めてきた王司。舌を耳の中に入れてきてつい変な声を出した俺だけど、すげぇ気持ち悪くて思い出したくもない俺の声。
くぐもったような声出しちゃって、だけどお構いなくベロベロ舐めてくると思ったら軽く耳たぶを噛んできた王司。今までこんな経験がないせいか体がどうにも言う事が聞かない。
動かないんだ。
「ぁ、おう……」
それでも王司の質問に俺は小さく頷きながら答える。恐怖心のドキドキは今でも続行中。だが、顔が熱い。
「……智志君、」
少しばかり王司の声が低くなったような気がする、が……。次はなんだなんだ、と内心焦る。先が見えない進み方は嫌いだ。
「シャワー浴びて帰ってきたってことは、セックスしたの?」
「はッ……!?」
今度は耳元で囁かれることはなく普通に――いや距離は近かったけど――聞かれた不明なこと。え、セックスしたの?って……誰とだ。
思わず驚いて顔を横に向けては王司と目が合う。薄暗くてよかった、と思うべきか否か……間近で見る王司の顔はとても綺麗で俺なんかとこんな距離のまま喋ってもいいものなのか?
なんて余計な考え事してしまうほど。
まぁすぐにそんな考えぶっ飛んだけどな。
「ふぁ、今度はなんだっ……んんっ」
穿いていたスウェットタイプのハーフパンツに手を入れてきた王司は迷わず俺のアソコをさすってきたのだ。薄々勘付いていたこと。
それは少し俺のが勃ってるってことだ。
寝ようとラフな格好で過ごしていたから多少の勃ち気味ならなんとなく足を浮かせて誤魔化せると思ったのに、触られたら元も子もない。バレる。
「智志君は元気なんだね」
「っん、おい……誰かとセ、ックスした前提で……言うなッ」
「……舐めたい」
俺の言葉は無視か。相変わらず無視なのか!
「舐めたい、って、あッ……!」
いつの間にか下着の中にも入ってきた王司の手。そうなるともう直接握られててなにも言えなくなる。
出したくもない声は出て、なにか言ってるが抵抗的なものがなにも言えない!
「ね、智志君。全部脱いじゃお?脱いで、気持ちいい事しよ?」
言いながらも扱くスピードがどんどん増してきて、物心ついた時から一度も他人の手で触られた事がないせいか俺は口を塞いでなるべく声を出さないよう、必死だった。
必死過ぎて王司がなにを言ったのか耳に入ってきてたが答える余裕もなく、亀頭部分を引っ掛かれた瞬間、情けなくもイってしまった。
「は、はぁ、はぁ……はぁっ」
「気持ちいいよね?智志君イイ感じだもんね?」
なにがイイ感じだ。確かに、その、気持ち良かった……が、こいつはいったいなにがしたいんだ。
「ん……はな、せ」
「智志君?」
優しそうな声で名前を呼ぶものの、イったばかりのモノをまだゆっくりと扱き続ける王司は鬼なのかもしれない。
また変な感じに飲み込まれそうで、だけどなかなか俺を離してくれないこいつは――俺を本気で掘ろうとしてるバリタチだ。
「ひっ、ばっ、やめッ……!」
出てしまった俺の精液をぬちょぬちょと王司は手のひらで伸ばし、あろうことか俺の穴という穴を触ってきた。さすがに挿れてくる事はなくとも未経験者の俺からすれば驚くの他になにがある?
あるわけがない!
今さら過ぎる本気の抵抗をしようと俺はイったばかりの体を力いっぱい溜めて、名の知れた有名人、“王司 雅也”の腹部辺りにエルボーをかました。
また見えないところを攻撃……ではなく体勢的にこれが限界だったんだ!
「ん゙っ、いった……」
苦しむ声と緩んできた腕に俺はやっと生還。少しおろされた下着とスウェットを着直してみるが射精したせいでぐちょぐちょだ……気持ち悪い。
それでも、これで参っただろう王司にもう一回掛け布団をかけて全裸の姿だけでも見えないように、と心遣いをしようとしたのに、なぜだか様子がおかしかった。
「はぁはぁ、んっ、智志、君……」
「……んだよ、へーんたい」
「あはっ……そー、おれね、へんたいなんだよ……」
「うわぁ……」
肘打ちがきいてるのか当たったところをまだ押さえてる王司。
それでもなぜだか、俺には恍惚とした顔にしか見えなくて、全裸姿でもモデル出来るんじゃないかと一瞬思いながらもすぐに――どうしたもんか――なんて、もう一度考えていた。
父さん、母さん。
俺はダメかもしれない――。
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