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よくある話(断固拒否)
* * *
どうも人というのは風邪引いたり弱っていたりすると心細くなるらしい。どんな人間も同じだ。そのせいか俺も、あの王司に、看病なんて言葉にやられて深い眠りに落ちた。夢なんて見る余裕もなく、眠って起きる間はまるで一瞬。
だけど、そろそろ俺ってば起きるか?なんて思う日もあるだろう。それが今の俺だ。
聞こえてくる不愉快な音は氷枕の水と氷が中で踊っているから。やけに寒く感じるのは風邪で寒気がしてるから。喉がイガイガしているのも完全に風邪が原因だろう。
俺は熱から来て次に喉に来る順番なんだな、と思いながら一旦起きようと決意する。
――さとしくん、
あぁ、なんだ、王司か。今回は悪い事したな。テスト前だというのに俺の看病とかしちゃってさ。治ったらお礼に菓子でも作ってやるから、食いたいの決めとけよ?
「ん、智志君、かわいーよ、ふふっ」
不愉快な音とともに王司の声もはっきり耳に聞こえてきたその時、
「おい……なにしてんだよ」
目を開けて王司の方を見てみれば最悪な事態になっていた。
「あー、おはよう、智志君」
そう言って王司はパクッと可愛らしく俺のモノをくわえていた。つーか、
「おはよう、じゃねぇよ!なにしてんだよ!くそ、離せ!う、わぁぁぁぁ、ぁ!おまッ、ちょ……!」
喉がイガイガして喋るにしても掠れたような声しか出ないにもかかわらず俺は頑張って王司を剥そうと、ダルい体をなんとか起こして肩を掴んだ。それでもビクとも動かない。
くっそ、まさか王司の口のナカで俺のモノが犯されるとは思わなかった……!
歯を立てずに上手く舌を使って口のナカで舐められた瞬間、体が縮こまってしまった。これが世に言うフェラか……当たり前にやられたことがないからかジッと王司の頭を見てしまう。
でもここでなにもしなかったら俺やられっぱなしじゃね?
それっていい事か?……よくねぇな!
とりあえず俺のモノから離れさせよう。頭……あ、髪の毛掴もう!
「ば、かっ……にしてんだ、てめぇは、ん……!」
「ひぃもひー?」
なにが、気持ちいい?――だ!
髪掴んでも意味ねぇとかなんなんだ!
なんでこうなった……どうしてこんな起き方をしなきゃいけねぇんだ!
焦る俺にピチャピチャと卑猥な音を立てながらしゃぶる王司。この音も不愉快だ……重い頭の中に耳から伝わる音。
「んぁ、はッ、マジでもう……俺かぜ引いて、んだからっ、ンん……」
「うん、うん、ん……智志君はここがイイ?」
話を聞くつもりがあるのか、それともはなっから聞く気などないのかわからないまま、王司はそう言って俺のタマを揉みながらツーッと舌で舐めてきた。
ダブル攻撃にもうダメだ、と回らない頭で考え始める。
俺が、なにしたっていうんだ。
王司を離すつもりで掴んだ髪も、足を必死に閉じようとした力も、押し殺した声も。すべてが緩くなってきてて、認めたくないが、気持ち良くなってきている。
俺のモノから出てくる我慢汁のせいか卑猥な音もさらに増していく。
やべぇ……止めるにとめられなくなってきてる……。気持ち悪いとか、屈辱だとか、そんなの一切ない感情はただただ欲を満たそうとしている証拠。
王司の髪を掴んでいた手もいつの間にか撫でるような、押し付けているような感じで、王司もそれに応えようともっと深くまで咥えこんでいる。
そのせいか喉奥まで突いたような気がして、俺は俺で喘ぐ声も止まなくなってきていた。
「ぁ、ん……っ、おい王司、ホント、やばいっつの、離せ……!出、るって……」
「んーんー、」
出そうになる事を告げて今度こそ力が緩くなっていた手をぎゅっと掴んで引っ張ってみるが、なかなか離れてくれないバカ。
マジで出るんだって、マジでイきそうなんだって、このままだと王司の口のナカで果てちゃうんだって……!
伝われ俺の気持ち!
精液なんて美味いもんじゃねぇだろ!
つーかお前が一番それ知ってるよな!?
経験者なんだからニオイにしろ味にしろお前が一番知って――。
「あ、はぁっ、おーじ、はあっ……やべ……!」
俺が必死に伝えようと、俺が必死に離そうと、俺が必死に、羞恥を隠そうとしていたのに、呆気なく射精してしまったこの気持ちわかるか?
俺のモノをずっと咥えていた王司は俺がイッたあとも、離していなかった。息は荒く、風邪の影響でもある汗がコメカミに伝って落ちる。
涙目で視界がかすむなか熱いぐらいの下半身に、王司がいる。
「んぐ、あっはは……さとしくのセーシ、すっごいウマいよ。熱くてちょっと苦くてね、でも甘いの……俺もっと飲みたいなぁ」
「はぁ、はぁ……はッ、バカじゃねぇの。なに、してんだよ……」
「智志くん」
やっと顔を上げた王司と目が合う。
熱は上がってるだろうか……頬が熱い。荒れる息も落ち着かないし片腕で自分の上半身を支えてる手がツラい。
「汗、もっとかこう?」
すべて果てたせいでガクガクする片腕を王司に気付かれたのかゆっくり体を押し倒されて軽く、ちゅっとキスをされた。
おいおい……これ大丈夫じゃなさすぎだろ……。ていうか、やっぱり精液まずいじゃねぇか。
うわ、よく考えたら自分の精液じゃねぇかっ!……あぁ、違う。今はそんな考え事をしてるんじゃない……貞操の危機、とはこのことを言うんだろうな――。
「ん、ふぅッ……そこ、やめろ、ばか……っ」
「乳首感じる?ピンクで可愛い、さとしくんの乳首……ん、おいひーよっ」
「喋んなって……ぁ、」
着ていたTシャツは脱がされてて、王司も制服のシャツを脱いで裸だった。
キスだって初めての時はあんなにもショックを受けていたはずなのに考えるのを諦めたせいか、もう一回されてもそれほどなにかを感じるものはなかった。
ただ精液のくだりはショックだったけどな……。
舌を入れられて上唇やら下唇を吸われるわ、歯列や舌裏舐められて震えるわで息する暇もないぐらいのもの。考えなくてもわかる、俺は王司で初めてを喪失してるせいでなにもかもわからなくて死ぬかと思った。
首筋は舐められて、しつこいほど舐められて、吸われたかと思ったら今度は噛んできて、激痛に耐えながらぶん殴った王司の顔。
それなのにこいつは満面な笑顔を浮かべながら『もっと、もっとやってもいいよ、ね?』なんて言ってくる。殴ると喜ばれる、なんてわかっていたはずなのにな……。
たまに来る目眩に目を瞑ってみるものの、王司が舐めてくるところから余計に感じてきて、どうしようもなかった。
「さとしくん、白い肌にキスマーク付けてもいい?いっぱい付けたい……ちゅって、赤も、赤紫も、濃い紫になるまで付けたい……智志くん、いい?」
「お前なァ……こっちは熱あんだよ……」
「声も掠れててステキだよ」
そう言って王司は俺のない胸に小さくついてる乳首を優しく噛んできた。――キスマークじゃねぇのかよ。
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