20 / 118
よくある話(断固拒否)
「俺っ、おれも一回出したいっ……智志君いい?もう、限界だ」
「勝手に、すりゃいいだろッ……」
あー、頭回らなくなってきた。
もうどのぐらい経ったんだろうか。集中的に首やら胸やら腹に舌を這いずっていた王司も徐々に下に向かって、また俺のモノを扱き始めていた。
頭の片隅では、あぁなにやってんだ俺……なんて思いつつも放棄して気持ちの良いまま王司にやられていた。だが触ったり舐めたりする王司も勃っていたのかベルトの金具部分の音を鳴らしながら自分のモノを取り出し、俺のモノにくっつけてきた。
これまた知らない感覚に驚きながらも王司の熱いソレと一緒に強弱をつけながら扱かれた時はゾクゾクとなにかが背筋を駆け抜けたような感じがして戸惑った。
「はっ、はあ、気持ちいい?さとしくん、イヤじゃない?んンっ……智志、くんっ――!」
「うへっ、なっ、なんだよ……あ、お前イッたの?」
「う、ん……うん、智志くん……」
そんな何度も俺の名前を呼ぶな。
今の俺は逃げねぇから……悔しい事に、逃げる気はないんだよ。
嫌だったら熱があろうがお前の希望通りボコボコにして部屋から出すはずなのに、普段より熱があって頭がイッちゃってるせいで、変なこと考えてんだからさ。
――欲を満たす――
そんな思春期学生が持つ気持ち。
だから、何度も俺の名前を呼ぶな、ボケ。調子が狂う。
「つーか……イッたはいいが、俺のケツに向かって出すなよ……」
「え、でも……まぁローションはあるから確かに、そこに出す必要はなかった、か……」
眉をハの字にして困ったような表情を浮かべる王司。俺も同じくハの字にして眉を垂らしながら『ローション?』と掠れた声を出す。
意味がわからないし必要、ないぞ。
「智志君?ローションないと痛いよ?――痛くさせないけど……」
調子が、狂った。……スッ、と急に冷静になれたのは血の気が引いたからか?
いや、絶対にそうだ……俺は王司の言葉に恐怖で熱にやられてた理性を取り戻し、考え始めた。
こいつ、俺とセックスするつもりでやっていたのか?
まぁこの流れは一般的に考えてセックスのノリか……俺が悪いのか?
けどこれって、これからセックスをします、的な言葉があるんじゃないか?
いや、もしかしてそんな“雰囲気”だったのか?
だとしたら……――無理じゃね?
「王司、それは拒否する」
「へ」
「だから、俺はセックスをしない」
急に興奮から冷めた俺。息も落ち着いてるから普通に喋れる。
ただまぁ、俺のモノは勃起したままで情けないんだが……。
素直に伝えた俺の気持ちを、聞いた王司。その顔はもう絶望しましたって感じでしばらく瞬きをしないで俺を見ていた。
片手にはいつの間に用意していたのか細長いボトル。キラキラしたラベルで随分派手なものだなぁ、と思っていたが流れ的にこれがローションなのだろう……初めて見た。
しかし俺はさっきの言葉を前言撤回した方がいいのか?
逃げない、という言葉。
これは俺から言わせれば擦り合いだけの、触り合いだけの話かと思っていたから“逃げない”と決めていた事だ。
こういった流れを作っといて、バリタチ変態である王司はこの場から逃げるんじゃないかと思って何度も俺の名前を呼んでいたんだろ?
それがまさか、王司からしたら最後までヤる意味での行為だったとは……さすがにない。
「……」
「……」
「はぁ……なんかもうベッド汚いな。ダルさも熱も残ったままだし、やっぱ病院行くわ」
ずっと黙ったままの王司に気まずいと感じて俺はその場から離れようとティッシュを片手に王司を退かす。
つーか濡れたタオルで一回拭こう。王司の言う通り汗をかいて気持ち悪いしな。ローションを持ったまま半勃ちで上半身裸のイケメンは、どう映るだろうか。
少なくとも、汚く見えないっていうところだ。
「じゃあ、お前も風呂に入るなりなんなり、着替えて来いよ?」
立ち上がろうとしたその時、腕を掴まれてベッドに倒された。
なんか前にもあったような気もするが、体勢が違う。
「な、なんだよ……ちょっと俺も熱で考えらんなかったんだよ、悪かったって」
ここで――期待してたら、悪かったって――とは言わなかった。
過剰意識してると思われたくなくて、な。……実際の王司は期待しまくっていただろうけど!
「さとし、くん……」
「あぁ?とりあえず腕を離せ」
「……」
「おーじ、ほら」
ゴホッ、と出た咳。
今何時だ?と思っててもこの空気で時間なんて見れない。さすがの俺でもここは参るようなものだ……。
「うっ、ひッ、く……うぅっ」
「えっ」
王司が泣いた。泣いてしまった。
意味が、意味がわからな――くも、ないけど。
「な、なにも泣くことないだろ?セックスしたけりゃ他の奴を探してそいつとしてこいよ。俺じゃなくても――「智志君じゃないと意味がないんだっ!」
びっ、びびった……大声出して、こいつなんなんだ。
「意味がないってなんだよ……俺にそんな需要ないぞ?なに求めてんだ?」
ははっ、と軽く笑いながら言う俺。少しでも過ごしやすい空気に変えたいがために、空笑い。けれど、王司には伝わらないらしい。
「智志君とっ、さとしくんとセックスがしたい!俺とのセックスを覚えて気持ち良くなってもらって、それでっ、それで俺と幸せに、なるような……!さとしくんに、イジメられながらっ……意地悪してもらいながら、セックスがしたいんだ……!」
「ちょちょちょ!意味がわからん意味がわからんっ!ああ!?てめぇケツを触るな!――うあぁ!?ままま待てぇぇぇぇぇ!」
ローションを開けて王司は手に大量の液を出し、その手で俺の穴という穴をほぐそうとふにふに押してきた。
馴染ませてないローションはあまりの冷たさに熱がありながらも大声を上げながら抵抗の意味でガッ、と強く王司の横腹を蹴ってしまった。蹴ってしまったのだが、後悔。
こいつは殴られ蹴られ希望なのだから、意味がないのだ。
「そう、そうだよ智志くん!殴り続けていいよ?さとしくんの気が晴れるまで殴っていいよ!」
「殴りてぇけど意味がないうえに俺のケツも心配してんだよボケ!い゙った……!」
鳥肌が立つほどの違和感が入り込んできた。
案外すんなり入るその穴は人間ドック検査内でも直腸内触とかあんだっけ!?とか考えがどこかにトリップするほどおかしかった。
やばいぞやばいぞやばいぞ!
これは間違いなく……間違いなく、掘られる!
「まーじーでー!ふざけんなぁ!」
「んっ……うん、うん智志君、もっと、もっとだよ、はぁはぁッ」
ーーーーーーーーー……
ーーーーーーーー……
ともだちにシェアしよう!