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打ち明けてやろう
――思い出す数日前の出来事。
看病されながらも危うく王司に襲われそうになった俺はどうにかして腕から逃げ出し、それと意味のない蹴りも入れたあと部屋から出て行った。俺の穴はまだ清い!
病院にも行かせてもらって、市販の薬よりもちゃんと処方された薬の方が治りもはやく二日後には学校に行けるまで回復。
だが、王司は隙を見て俺をまだ狙っていた。
雑誌を読みながら置いていた手をソッと、しかもイヤらしく触ってくる王司。
いつもは床に座ってゲームをするスタイルだがたまたまソファーに座ってやっていた時、後ろから邪魔にならない程度で抱き締めてくる王司。
風呂に入ってこようとする王司。
これらすべてを抜け出してきた俺はもはや超人レベルではないだろうか。
「初めてキスされたあとも、もっと俺をケナシテとか言ってたんだ。最初は、は?って思ってたんだが、だんだん意味がわかってきて……そしたら次はアクセサリーに見せかけた首輪を自分に買ってたんだけど、あたかも俺が買って王司にプレゼントしました、って反応で嬉しそうな顔を浮かべてたんだ……」
「……それってまさか赤いチョーカーのことか?」
「あれ首輪の意味だったのかよ……」
「しかもな、これでやっと俺は智志君モノだ、って言ってたんだ……」
とどめを刺せば二人はまた黙り込む。
これは、シリアスに持ち込むべきなのか。俺としてはもう隠し通せない事だからバーッと言ってすっきりさせたいんだが……。
「は、はははっ……十分に面白い話だぞ中沢!あのバリタチと噂されてる王司が受け役だったとはな!」
「そ、うだな、まさかの受けだったとは思わなかった……いや実際、攻め役でセックスしてたみたいだけどな!本当は受け希望だったんだな!」
「あ、それでお前、俺はセックスを知らないとか言ったのか?あぁ!童貞だもんなぁ!」
これから話を聞いてシリアスにするかしないかの判断を、今ここで行ったらしい。
結果、シリアスにしない方向。――が、とんだ勘違いしやがって……!
つーか童貞で悪かったな!
そんなでかい声で言うなよバーカ!……とはいえ、二人がこういう空気にしたんだ。
俺も俺でスッキリさせやすい流れに乗って『で、』と大声で叫んだ。
「俺が風邪引いたあの日、襲われかけたんだ!いやぁ、参るねぇ!男同士とか、その前に女ともヤった事ねぇのにドキドキ通り越してドクドクしたよなっ!って、いう……」
「……」
「……」
「……」
おい……なぜまた黙った……。ここは笑って『んだよ、やっぱり噂通りだったのかー!』とか!
面白おかしく『風邪引いてる相手を襲う王司マジ王子様外れだな、HAHAHAHAHA!』とか!
二人らしい反応があっただろうが!
なんでさっきまで笑って流れてきた空気なのに俺が話すと俯いて気まずい空気が帰ってくんだよ!
いや……でも! もういい!
俺が、俺自身が、 限 界 な ん だ !
どんな空気になろうがなんだろうが、いい!
王司のションボリ姿を見るのが耐えられないんだ……!
「王司はバリタチだと思う。熱で思考が鈍っていた俺もあいつからフェラされて、その先も許したんだ」
「智志の口からフェラって……」
「息子はどんどん成長するんだぜ、奥さん」
「ただの触りっこラインかと俺は思ってたんだが、どうもあいつはセックス本番である前戯だったらしい。俺が寝ている間にローション、コンドーム、ティッシュをベッドの端に置いてあって準備万端だったみたいで。その準備に気付いたのはセックスを断る時だった」
「智志が……!」
「奥さん、諦めてもう旦那 と二人でゆっくり暮らす先を考えるんだな」
「でも王司はなかなか理解してくれなくて仕舞いには、王司とのセックスで幸せを感じれるような?俺が王司をイジメながら?意地悪しながら?セックスがしたいんだって泣きべそかきながら俺のケツ触ってきて……そう……泣きながらな。あの涙の量はすごかった……」
「触られっ……!?」
「だから息子さんはな……つーかドM攻めとかまたマニアック野郎だな……うめぇ」
俺の立ち位置はどこなんだ……そう思いながらも俺は二人に向かって、だけど遠い目をしながら、また『……俺は、セックスを知らない』と呟く。
――攻めながら受ける、とか童貞の俺からしたら上級者過ぎる……。
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