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校内での接触
なるべく急ぎ目に四階までのぼり、7組の教室へ行けばまだ担任が来てないせいで少々騒がしかった。
俺の教室とあまり変わらない騒ぎだが、どこか違うと思うのは他のクラスだからだろうか。そんなのどうでもいいか。
とにかく俺は辞書を借りるべく、まずは近くの野郎に話しかけて王司か会長様を呼んでもらおう。
隠れるように7組の教室を覗いていたのをやめて、どうどうと出入り口に立ち――困惑した。
そしてまた身を隠す。
「……あ、ありえねぇ」
待て……7組の連中、やばくないか?
顔面偏差値がどこのクラスよりも高く感じる……と、他のクラスと比較してみたが実際は俺のクラスぐらいしか知らないわけで――でも、高い。
男の俺でも男をカッコいいと思わせるほど、みんな容姿がいいと気付いた。それにもやはり種類があるみたいで、ワイルド系っぽい奴や可愛い系っぽい奴、軟派系っぽい奴や寡黙系っぽい奴など。
見た感じではあるが、みんなとりあえず、かっけー。
素直に思った事だ。俺こんなクラスに話しかけて、さらに王司や会長様を呼ぼうとしてんのかよ……心が折れる……。
その辺にいる奴等でもレベルが高ぇのに……。
なんて思いながら話しかけやすいようなキャラがいないかチラッと教室を見渡してみると、奥の方で少し溜まりが出来た席を見つけた。
人と人の間に出来た隙間を、じーっと見てみる。そして覗けた、その中心部。
「中沢、どうした?」
「うわっ……!?」
突然、後ろから背中を押されながら誰かに呼ばれた。そのせいで肩を大きくビクつかせたのは、ビビっていたからだ。
こんなところでもじもじしていたら、いけないとわかっていながらも中心部人物――王司 雅也の存在を味わっていたから。
「か、会長様じゃ、ないっスかー……」
俺を呼んでいたのは願ったり叶ったりな会長様。
「7組に用って事は、雅也か」
「いや!俺、会長様にちょっと!」
「俺に?」
俺が会長様に用事があるという話に少し不思議と感じたのか眉間にシワを寄せながら首を傾げている。
選択肢に会長様も入れていたし、俺は嘘を吐いていない、うん。
「俺はてっきり、あいつかと……」
会長様はまたしても。
今度は“あいつ”と伏せていたが、視線の先は確かに“あいつ”だった。
あんたに用事があると言ってるのになんで何回も“王司 雅也”関連を推してくるんだ?
可愛い系の男を中心に王司の周りに集まってるみんな。
その中の王司は爽やかさはいつもと同じでも、よくわからないがカッコ良さが倍増しててまるで輝いてる人物だった。
俺の知ってる王司だが、俺の知らない王司がいる。
こう思ってしまう俺っていったい……。
「いや、あいつにも頼もうとしたんだけど、圧倒的ななにかが俺の中で……7組ってすげぇのな……」
「……俺はお前がなにを言ってるのか理解が出来ないな」
俺も出来てねぇよ。
つーかさっさと言って借りて戻ろう。今ならまだ間に合う。
苦笑いを浮かべる俺とまだ眉間にシワを寄せ続けている会長様。
もう、いいだろう!
「会長様お願い!辞書貸してくれ!最初は英和でその後が国語!」
小声で、だが表現は体で大きく手を合わせて頭を下げる。
あとは会長様が『待ってろ』とかなんか言って辞書を持ってきて俺は教室に帰るだけだ、と組み立てていく。――と、思っていたのに。
「あぁ?辞書?それ俺も忘れたんだよ」
生徒会長様であろうお方が、こんな……。
「え、じゃあ持ってねぇの?」
「おう。今さっき平三に借りてきたんだ、国語から」
そう言って見せてきたのは片手で持っていた辞書。
ねぇわ……マジであり得ねぇわ……。じゃあなんだ?
俺はこの人とすれ違いになりながらもこの7組に来たってことになるのか?
とんだバカの行動だな。
「だから中沢、お前は雅也から借りて来いよ」
ちょっと待ってろ、と付け足して自分の教室に入って行く会長様。
俺の返事も聞かず、そのままドカドカと、あのおかしな大群の中に入って行って、王司に話しかけている会長様。
え……マジかよ、は?
動揺してると群がっていた一人が、こちらを見ようと振り返ってきたような気がした――ので、俺はとっさにドアの方へ隠れた。
もう、帰ろうかな……。
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