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日常で油断していたその先

   指先から付け根まで入り込んでる王司の指。  舌先でちろちろと舐めてれば嬉しそうに笑うし、逆に噛めば吐く息とともにいつもより高い声を出して表情が歪む。が、どちらにせよ最後に見せる顔は気持ち良さそうな、かお。 「ん、お前はなんでそう敏感なんだよ……そんなに指がいいか?」 「うんうん、噛んでくれて気持ち良い……くすぐったくて、ムズムズするけどまたそれがたまんないや」  王司からしたらきっと具体的に説明してくれたんだろうが全く伝わらないのはなぜなんだ……。  そういう性癖がないからだ、と自問自答してみるが本当に伝わらない。だけど、どうしてだか、俺もやってみたいと思ってしまった。  抓っていた手はもう王司の頬を撫でるように添えていて、指ごときで息を上がらせてる口に目がいく。このまま、この手を突っ込んだら、また苦しそうに喘ぐのか?  それとも、ただただ苦しいだけで唸り声を出すだけか?  焼きあがったロールケーキ用のスポンジを出して冷まさなきゃいけないにもかかわらず、作り終わった菓子を木下の部屋に持って行く約束もしているのに、俺はそんな事を考えている。 「王司……」  どう考えても王司が喜ぶ選択肢しかない。 「んっ……?」 「俺にもそれ、やらせろよ」  そう言って頬に添えていた手を王司の口元までずらして、唇をゆっくりなぞったあと、指を突っ込む。 「んぁっ!?んんッ……ちゅっ、ぁん、きもひぃ……?」  いきなり突っ込まれて驚いた表情を見せながらも瞬時に理解してやっちゃうあたり、さすが王司だ。三本ほど勢いに任せて入れてしまったが、温かい口の中は確かに気持ちいいと思う。  人の舌なんてそうそうに触れるものではないし、そういった機会だって絶対に少ないだろ。  俺みたいな奴はとくに、異性相手はもちろん同性相手だってきっと王司以外ほぼあり得ない。  かり、と当たる歯にヌルッとする舌の感触。……くすぐったいし、ムズムズーーするなぁ。 「……む、ンンぅっ、しゃと、しくん……んっ」 「ははっ、ちゃんと名前言えてねぇし、よだれもすげぇな」  されるがままで口の中を堪能していたが俺は王司と同じく指をバラバラに動かしていた。  そのせいか口端から垂れてくる透明なそれは俺の手にまで伝ってくるほど。  完全に塞がらないわけで、あまり強く噛んでこない王司はもはや甘噛みをしている。それでも、くすぐったいしムズムズと落ち着かない。  最近なんだか王司 雅也と、こんな自分になっても悪くないんじゃないかと思い始めてる。 「王司、」  もともと近い顔の距離も、違和感なく見れる。 「……苦しいか?」  耳元で囁けば王司は小さく、だけどちゃんとした意思は大きく見えながら首を振る。 「んひゅ、あぅッーーアッ、あ、さとしくん、はぁッ」 「ん?」  突然、嬉しそうに咥えていた俺の指を口を離した王司。  多分、俺が自らこいつの耳たぶを噛んだせいだろう。 「うぁ、っん、さとしくん、さとしくんッ……イイっ、」 「そりゃ、よかった」  薄そうに見えて意外と分厚い、柔らかい部位。  これで大きければ金持ちになるって話があったけど、実際どうなんだろうな? 「んン……」  耳たぶを噛んで舐めてしゃぶっての繰り返しをしてやると王司の体は軽い身震いをした。  そんなに気持ち良いか。  手に取るようにわかる王司の気持ちに思わず耳の中に舌を入れる。  王司のならなにも思わない、と思うこの時点で止めれば終わったはずなのに。  気付かなくてもいいところもそのままだったはずなのに、じゅるじゅると音を立ててやれちゃってる俺はいったいどこで知識を得たんだっけ。 「アッ、ひゃ、ぁっ……!んぁ、さとしくぅ、ん……ンッ!」 「……王司、お前の勃ってんぞ」 「はあ、うんっうん、だってッ……きも、ちぃからっ、は――」  座って覆い被さるような形は変わっていない。  俺の足の間に王司の大きな体が入り込んでるせいで、くっつくものも、あるだろう?  やけに張ったなにかが、いやもう断言出来るナニを俺にこすり付けるように腰を振っていたんだ。体勢からして他の場所から見たら絶対に入ってると思われてもおかしくない。  ちゅっ、と耳にキスしてやればその感触と音にまたヤられたであろう王司は息を漏らす。 「はあ……っ、ん」 「……」  でも、今日はここまでだ。  

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