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日常で油断していたその先
「王司、もう退け」
俺がそう言うと首をおもいきり横に振る王司。
まぁ、そうだよな。勃起してるのに、しかもそれを知ってるにもかかわらず終わりとか言われたら酷だよな。
でもなぁ、俺にも限界ってものがあってさ?
菓子を待ってる平三達の事もあるし、ここまでにしとくんだよ。
「あ、さとしくん、やだ……」
「静かにしろ、王司」
「んぅ……離れないでよ、智志くん、このまま……」
離れまいと俺を抱き締めてくる。
プラス、勃ったチンコにゆさゆさと腰振る動きもやめない辺り、やっぱりさすが王司 雅也だ。
なにも掴んでいない俺の腕はどこへ持っていこうか……雰囲気的に言えば、王司の背中に回せばいいだろうに、なかなかそれが出来ない。
けど終わらせるには王司になにか期待させるような言葉を言わなきゃ終わらない気がするな……期待させるような言葉……。
「あー、嫌ならいいが……キスしてやるから退け」
期待させるような言葉、ではないが、これもありだろ。
王司のスイッチを押すために言った『一週間、一緒に寝る』という言葉のあとに来た羞恥心も、今は不思議となくてサラッと言えた。
別に王司の気持ちを弄んでるわけではない。俺に出来る事を探した結果、キスに至っただけで……。
「王司?他がいいか――んぅッ!?」
「ん、智志君、智志くんッ」
歯と歯がぶつかるんじゃないかと思ったほどの食いつき方。少し驚いて空っぽの俺の腕もギュッと王司の背中にしがみ付いている。
上唇、下唇、舌裏のしゃぶられ方はどう言えばいいかわからないが、さらになぞられたりすると噛まれた指と同じでムズムズしてくる。
一瞬の隙に吸い込む酸素を頼って苦しまず何度も絡め返してみるが、まだ俺には上級者コースとしか思えないものだ。
こんな俺なのにこいつはよく求めてくるよな。
「んっ、ン、さと、しくんッ」
「んん、もっ、バカやめろ……」
顔を逸らしてキスをやめるものの王司は諦めず俺の頬に口を付けてくる。
流れが堂々巡り過ぎて終わりが見えねぇ……もういい、お前は喜んで一人寂しく抜いて来い!
離す決断をし、心の中で『――3、2、1』とカウントしたあと、王司の横っ腹を拳で殴っといた。
「はぁはぁ、はあッ、智志くぅん……イイけど、やだぁ……」
「床に座り込むとやっぱ痛ぇな」
呟く王司を無視してちゃんと手を洗ったあと、放置していたスポンジをオーブンから取り出して再開する菓子作り。
――変わりつつ思う日常は、俺が油断していた時に襲い掛かる王司 雅也ってやつ。
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