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どう考えても俺の、

     *   *   * 「さぁ、中沢様っ!今のお気持ちは?気持ちはどうなってる!?」 ――気持ちなんて、 「木下が騒ぐのもしかたがない、のかねぇ……?」 ――わかっていた、はずなんだけどな……。 「……化け物か、あいつは……」  貼り出された結果を見てみれば、誰もがポカーンとした表情。  その理由とは、 【1位-王司 雅也】  そして名前の隣に表示されてる総合点数、905点。  明らかにおかしな数字が混ざっていたからだ。 「いやいやいやいや……最後の5ってなんだ?うちって9科目だよな?え?10科目だったっけ?あれ?」  テンションが高くなってる木下は俺の肩を乱暴に叩いたり掴んだりしているなか、俺は平三に語りかけるように口にした。  だって、いや、おかしいじゃないか……905点ってなんだよ。そんなの漫画やドラマでもみたことないぞ……。でも俺が受けたのはしっかり9科目であり10科目目のテストが思い出せない。  そりゃそうだ、だって受けてねぇし!  まじでなんなんだ、あの点数は。王司の下である2位の名前は会長様。その点数もこれまたバカみたいな数字で、893点。  ほぼ満点ですごいことなのに王司のものを見たせいか、俺の目は正しいとわかる。  しかし王司の点数を見れば、俺の目は異常なのかもしれないと思ってしまう。……509点の間違いじゃないか? 「王司は、本当にスゴイらしいからさ」  あまりの驚異過ぎるもので気持ちをおさえるべく平三の背中辺りのシャツをギュッと掴んでいると、平三は言った。  とくに数学はぶっ飛んでいた数字らしい。教師達も逆に頷いてしまった公式にわかりやすい説明を加えたことでプラスの数字をあげたと。 ――意味がわからないが、わかりたくもない現実に、この学校は大丈夫なのか……と、今回140位の俺が心配してみる。  ちなみに木下は7位で平三が82位らしい。この二人も俺からしたらあり得ねぇわ……。 「あ、中沢、ちょっと待てー」  放課後になり、またいつもと同じような時間を過ごして、あとは夏休みを待つだけ。そんな時期に取り掛かった今日は一日中、王司の点数で持ちきりな日だった。  素直にどこも寄らず寮に帰った俺と平三と木下は部屋に向かうべく廊下で別れた瞬間、俺は寮長に呼ばれる。 「なんですか?」 「また宅配だぞ」  そう言って、確かに渡したからなーと寮長は去ってしまった。  見覚えのある会社名に、小さな溜め息。なにもこんな日に届かなくてもいいじゃないか……。あー、でもまぁいいか。いっきに終わるだろうよ。  中身を見なくてもわかる箱は俺の金で王司のために選んだ、アクセサリー。もう首輪ではない。平三や木下から変に思われないようにブレスレットにした。  色は黒にしたが、王司ならなんでも似合うだろうという思いもあり、適当に選んだことは否めない。  でもさ、期末の結果で1位だろ?  今日から一緒に寝るわけだ……なのにこんな壊したかわりという名のプレゼントまで渡したら勘違いするだろ。王司ならあり得る……。  せめて昨日か、明日に来てくれればよかったんだけど。 「ただいまー」  それでもグダグダしたってしょうがないから吹っ切って王司に渡す箱を持ちながら部屋に帰る。すると王司は飼い犬のような勢いで自室から出てきて『おかえり智志君!』と言ってきた。  王子様と呼ばれてる人だとは思えないほどのはっちゃ気振り。まあ、そういった反応も悪くないな、と。 「おう、今日のメシはなにがいい?いつもなんでも作ってやってるが、今日はさらに特別でもいいぞ」  頑張ったのは確かで、結果も予想以上のものを残したから、これは素直に喜ぶべきだろ?  約束の他にもやってあげちゃう俺ってば優しいなぁと自賛していたら王司は即答で『チャーハン』と答えた。  まさかのチャーハンリクエストで戸惑う。  別に俺のチャーハンは特別美味いとか、なにか隠し味を入れて他のチャーハンとは味が違うとか、そういうのがないからだ。  どうしてチャーハンなんだ……いや、手っ取り早くて楽だからチャーハンでいいなら作るけど? 「俺、はやく智志君と寝たい……いっぱい寝たい。明日は休みだから朝までといわず夜までずっと寝ていたい。智志くん、さとしくんはやく食べてお風呂入って、寝よ?ね?俺、結果良かったよ?」 「……」  チャーハンのリクエストがよくわかった。すぐ出来て、食べれて、片付けられて、次の時間にいくまでが短縮ですむからチャーハンにしたんだ。  カサッと見せられた1位の文字に腹立たしく思う王司の順位表。  あー……ダメだ、こいつは天才、こいつの頭はおかしいぐらい良い……。そう言い聞かせないとこの先やっていけないような気がしてならない。  少なくとも木下みたいに授業中でも漫画だけ読んでて順位を10位以内に入れるっていうのがないんだからマシじゃないか。  実際、木下は知らないが、俺が見てきた限り王司の方が努力してるように見えたから、今は王司を贔屓しようじゃないか……そうしとこう。  なんとか自分に落ち着きを取り戻させてチャーハンを作ろうとキッチンに向かう。  その時こんなタイミングで渡すのもどうかと思うが面倒にはならないだろう、と判断して持っていた箱と切れてしまった首輪を王司の手に置いた。 「あれ……これは?」 「悪いな、実はそれ俺が切っちゃってさ。代わりの物だ。気に入るかは知らないけど」 「さとしくんが、俺に……」  なにを今さらそんなジッと見てんだよ。驚いてんのか?  やっぱ実際、本人から貰うと違う反応するんだな……。まぁそうか、あの首輪は自作自演で貰った態度だったし。  冷蔵庫を開けながら材料を見ていると王司から『開けていい?』と言われたから適当な返事をすれば、すぐにガサゴソと聞こえてきた。  期末の結果は、良し。壊した代わりの物もあげた。約束も、ちゃんとやってやる。――明日の夜まで寝るとかはあり得ねぇけど。  約束以外を見れば、どう考えても俺のおかげで、俺のせいだから。 「――はあ……智志くんから貰えた物だ……。こっちの首輪なんて、俺が壊しちゃったのに……どうしよう、ちゃんと智志君のモノになれてるかなァ」  そう、俺のせいで壊れたから、あげただけで……――あ、ネギねぇや。  

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