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お約束、一日目の結果

   7月も半ば。  数年前から異常気象としてよくニュースになっている夏はこれからだ。  今はこうやって隙間もないほどくっつけるのは夏の実感がなくて、夜だからだろう。  それに昼間はもうさすがに暑く感じる日が続いてるから明日もずっとこのままくっついたままなんて無理があるからな。  冷房をつけたくてもまだはやい気がする。でも窓を開けっ放しにしてても風が吹かなきゃ暑さは変わらない。  ああ……。 「どうでもいいけど、まだこれからも寝れんだからそんな一緒にいなくてもいいだろ?」  さっきから締め付けてくる力は変わらずで苦しくて、王司の腕をポンポンと叩きながら言う。 「一週間は短い。……本当は一週間じゃなくてこの先も寝ていたいんだよ」 「おまっ、わざとだろ……」 「んーんー、智志くん……」  首元に顔を埋めてきた王司。  喋るたびに吐く息が首元にかかって、それがくすぐったいのと、その息遣いには覚えがあるから余計にイラつく。最近、俺自身が覚えた――イヤらしさが含むものだから。  今にでも舌を出して這いずりますって勢いに見えて少しだけ焦る。というか、王司なら絶対にあり得る行動で、俺の勘も“王司限定”でよく当たるから、たぶんこの後、 「ねぇ、智志くん、ちょっと……ちょっとだけ、イイ?」  ……この後どころじゃなかったわ。直後だったわ。  ふっ、と顔を上げて俺の目を見てくる王司。その目は暗い部屋でもわかるくらい潤んでて、興奮しているように見える。  息だって少しずつ、荒れてきてる。  こいつはいったいどこでスイッチが入ってこうも俺を求めてくるのか全くわからないな。……あー、いや、実は最初からスイッチ入ってましたパターンかもしれない。  見抜けなかったのは俺の経験不足に過ぎないことで、見抜いてたとしてもそこから逃れられないように王司が動くんだろうな。 「……俺の意思を聞いてくるあたり、まだちゃんとセーブ出来てるじゃねぇか」 「智志くん、さとしくんの声も聞きたい……ね、いい?」  その問いに、ふるふると顔を横に振る。  俺はちゃんと〝なにもしねぇけどな〟って言ったよな?  その時の王司の反応は見ていなかったし聞いてもいなかったが、俺の中では“なにもしない”という事で今日から寝るようになったんだ。  なのにこいつは、なにかを始めようとしてやがる。 「さとしくん……」 「おいバカやめろ、まだなにも言ってないだろ」 「ん……」  横顎から頬にかけて唇を滑らすようにキスしてきた王司。  顔を逸らして距離をとってみるが頭を押さえられてるせいでそれほど離れることは出来なかった。  なんだろうな……絡まってる足を曲げて俺の太ももあたりに王司のモノを擦られてる気がするんだけど。どうする、俺。  完全にスイッチが入ってる王司に殴っても喜ばすだけだし、嫌がっても迫ってくるのが王司だし、下品な言葉を浴びせてもとろけたような表情で俺の名前を呼ぶだけだろうし。  選んでもこの状況を打破する事が浮かばないのだが……。俺がここでこいつに合わせたら絶対に今後も、この一週間毎日、こういう展開が待ってるに決まってる。  でも避けれないから悩んでるわけで……。  あー、くそ。“俺が”負担にならなきゃいいんだ。  そんでもって王司が満足出来れば、問題ない、はず。 「あ、智志くんごめん、離れないでっ、おとなしくしてるから……!」 「うるせぇ」  動かさなかった俺の両手をそれぞれに動かしてなんとか絡みきった王司の腕を退かす事が出来た。体を起こした俺に不安になったのか服を掴んで来る王司に一言呟いて口を手で塞ぐ。  さっきよりも涙いっぱいに溜まっているのは気のせいか、それともその通りなのか、わかっている理由に俺は笑いが出そうになった。  俺が離れるだけで悲しむとか、どんだけ。 「王司、静かにしろよ……?」 「さとし、んぅ……」  手で塞いでいたうちの指を王司の口の中に入れる。  この間やったものと同じだ。ここでちょっと責めてやれば少しはおさまるだろ。もっと悪化したら、次は態度に出せばいい。  なんて、ちょっと自惚れすぎか、俺。 「ゔっ、ン……ふぁッ」 「喉奥に突っ込み過ぎて吐くなよ?」 「んっんっ、はァ……ンんッ」  体勢的に言えばさっきと逆転。俺が王司の体の上に少し乗るようなかたちで、こいつは寝転んだまま。  ほんと、木下がこんなところを見たら興奮のあまりうるさくなると思うが『やっぱ王子様が受けじゃねぇか』なんてほざきそうだ。  でも違う。 「舌、引っ張られるの好きだなぁ……っ」 「ふぅ、ん、ぁ……」  よだれなんてお構いなしに垂らす王司の舌に触れてつまむように指先を動かせば、ぶるっと震えているのがわかる。  ここまではよかったにしろ、王司の手はいつの間にか俺の服の中に手を入れてて横っ腹から背中にかけて撫でていた。  それ以上もそれ以下も動かすのは許さないが、そうさせないようにするのが今の俺だ。 「っ、耳も舐めてやろうか」 「ん、うんンっ……はッ……」  とりあえず俺、ちょー頑張れ……。 「あっ、さとしく、んッ、ははっ、べろって……もっとベロベロに、ガリッって、ね?」 「……なに指離してんだよ、他のモノぶっ込むぞ」 「――俺の口のナカに智志くんのチンコ?」  目が輝き始めたこいつを、どうしよう……さっそく頑張れる気がしねぇよっ!  

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