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この際、なんでも教えてください

   左手には“先生と助手”になってくれるであろう二人への白桃ゼリー。右手には王司の腹を殴ったせいで出来た痛み。  今の俺はそれほどまでにして、木下の部屋に行かなきゃいけない理由がある。 「こうも癪な展開は俺的にちょっとアレだが……」  木下の部屋前に到着してノックをする直前に呟いた。  一緒に寝る一週間の一日目がようやく終了。解放された体はほとんど身動きが取れなかったせいでボキボキ鳴らしていた。  その音に気付くまでの浅い眠りだったのか手探りで俺の服を掴んで来る王司。  それを離してベッドから立つと後ろで勢いよく起き上がった王司に俺はついビクッとして驚く。  そういやずっとこのまま、とか言ってたのをさっそく破って起きちゃったもんな……面倒にならないよう朝飯でも作る行動をしよう。  そんでもって、平三と木下に助けを求めよう、と。  昨日、眠りに入るほんの数秒前に考えてたことだ。 「おーい、木下入るぞ」 「どうぞどうぞ。俺の気持ちも考えずに来ちゃうネコ様どうぞー」 「その言い方やめとけってー。お、ゼリーだ」  俺が持っていた物に目を入れたのは平三。本当にこいつは俺の胃袋だと思う。  がさっ、とゼリーを入れた袋をテーブルに置いて床に座る俺にソファーから立ち上がって袋の中身を見る平三。木下は相変わらず漫画を読んでるだけ。  この二人が今日、俺の“先生と助手”になってくれるであろう人だ。  だが今の王司はなかなか俺を離そうとしない。  それは昨夜からわかっていたことではあったが、そうもいかなくなったのが俺の考えで、部屋から出るのも必死だったな……。  もう暴力で解決させよう、と思った俺って終わってるのかもしれない。  まぁ王司の腹に二発ほど殴って無理矢理出て来たんだけどな。  反省?  そんなものあるわけがない。  俺の、俺による、俺だけのためのベンキョーをしに来たんだからさ。 「でー?なんだよ、また急に来るとか言って」  回る椅子に座っていた木下がグルグル回りながら漫画を読んでいる。  慣れてないせいか乗り物酔いしやすい俺からしたらその姿だけで酔いそうだ。  時間は昼前。だから別に非常識な時間でもないんだが、木下からしたら非常識らしい。  理由は二つあって、一つは休日の邪魔をされているから。もう一つは連絡を受けて5分で俺が来てしまったからだ。  こいつ的には一時間前とか、30分前とかに連絡をしてほしいらしい。  でもここは寮であり、玄関というドアから出たら秒で誰かしらの部屋に着く空間。それに平三だっていつからいるのかわからないが、同じだ。  そんな誰よりも先にゼリーを食べる平三を目にしながら俺は小声で『王司が……』と口にした。  まだ内容は二人に伝えてない。  言わなくてもわかるのが二人だから平三がわざとらしく『なんだよ』と聞いてきても、心の中では王司関連だと思い込んでるに違いない。  全く以てその通りです。 「王司か。もう一緒に寝てんだもんな!」  バシッと漫画を勢いよく閉じる木下。 「ゴフッ……!」  食べていたゼリーを喉に詰まらせる平三。 「……」  二人の反応に黙る俺。  木下にはもうなにもツッコまないが、平三はなんだ?  見て見ぬフリをしてくれてるのか?  わかっていたはずなのに慌てることないだろ……あ、俺言ってなかったっけ。結果が出たその日から寝るっていうやつ。  会長様を通じて聞いてると思ったけどな……王司の奴そこまで話してないとか?  まぁいいや、今はもうどうでも。 「どうしたら……変態マゾ君のあしらいが出来ますかね……」  ホモと、ホモ好きがいれば、解決方法が一つでもあるかと思ってな……。 「なるほど……君もついにそういった悩みが出て来たわけだな……」 「え、智志、これどんな設定になってんの?木下もすぐノリに乗るってなに?」 「さっ、さあ……?」 「――それでは始めようか、ホモ調教っ!」  え。  なんか俺が思っていたのも、なんか違うんだけど?  

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