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六日目の夜

     *   *   *  近いのは、気のせいじゃない。 〝面白半分でされるがままになって様子見してみ。きっと半分の面白さが全部の面白さになるから〟  今日を含めてあと二日だ。  今でもなんとか安眠を保てているものの、あと二日もすれば本当になにも気にせずちゃんと寝れるという不思議現象。  まあ……そこで王司が黙って俺の部屋に入ってきたら容赦なく、手段を選ばず殴っとくけどな。  でも昨日の護身術がそうとう効いたのかもしれない。だって朝はなにもされなかったから。  言ってなかったけど起きたらだいたい腹や背中を触ってきたり、どこかしら舐めてきたり、あいつのチンコを擦られたりと……うざかったー。  あぁ、うざかったー!  とはいえ何度も言うが、あと二日だ。少し……少しだけ俺自身の気持ちに嘘を吐いて気付かないフリをしながら思ったこと。  あと、二日なんだ。 「王司、お前の距離感が俺にはわかんねぇよ……」 「んん……なんか、すごい寂しくなってきちゃって」  近い近いとは言い続けるが苦しいなんてもう言わない。  そう。  例え、王司が、俺に、覆い被さっていても。  昨日に続きまだゲームをやっていた俺は一日二日で寝る時間もだいぶ遅くなった。今の時刻は午前1時前。  振り返ってみろよ。20時過ぎにベッドへもぐり込んでた奴が、日付跨ぐ時間にベッドへもぐるんだぜ?……今までがこうだったのに俺はなに誇らしげに心の中で語っているんだ。  それより王司だ、王司。まるで最初に戻ったかのように首元に顔を埋めている。  当然、吐く息吐く息はくすぐったいぐらいに当たっててなにも言えない。が、撫でられてる手がイヤらしく思えるのはたんに俺の自意識過剰でいいか?  つーか今だけ自意識過剰男になりたいんだけど? 「智志くん……」 「そんな声出すなって、もう寝ろよ」  明日――今日――も学校で平三曰く、王司のクラスである7組は朝から体育があるらしい。  寝不足でぶっ倒れる、なんてことはないだろうが初夏をナメちゃいけないだろ。俺だったら倒れる前に見学するけど。 「さとしくん、さとしくんは?また俺と寝てくれる?」 「あーあー、寝る寝る。明日もあんだからそんな最後の日みたいな言い方すんなよ」 「最後……」  マジかよ……最後というキーワードが地雷か。さすがに察しが悪かったな、俺。 「ふぁ、ん……はぁ……つーか、」  ひとつの欠伸が出る。 「うん」 「俺は寝る。王司も寝るなら退けよな。朝ツラそうだから。俺が」  眠気に勝てるものなんて俺の中ではないんだ。  今日だけはこいつの好きなようにさせてみようじゃないか。やりたい放題だぞ、やりたい放題。  俺の意思は眠気のせいでどこかに行ってるみたいで、口にはしなかったがもう放置。  放置だ、放置。 「おやすみ、さとしくん」 「……」  運が良いのやら悪いのやら。こうやって俺がなにも抵抗しない気でいると王司も素直にそれを受け入れておとなしくなる。  やっぱりこいつがうるさいのって俺の抵抗が原因なのか?  一昨日辺りにもそんなのあったよな?  やっべぇ、先生に助手さん……俺が本気で抵抗するとこいつもスイッチが入るみたいなんだが……。まぁ、いいか……安眠は大事なわけで、明日で終わる。  とりあえず今日も寝れるし、なんでもいいや。  

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