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本能
「智志くん……痛くしない、絶対に痛くしないから、」
ぴと、と。
コンドームをつけた王司のモノに再度ローションをかけて解した俺の穴にくっつけてきた。
「うお……」
未知なる痛みの恐怖に過剰反応してしまう俺は王司が必死で痛くしないよう頑張ってるみたいだが、届かない。
いや、配慮は届いてるがそれに応えることが出来ていない状態だ。自分にいっぱいいっぱいで逃げ腰になってるのは俺の方だと言われてもしかたない。
本当にあれが入るのかよ……。平三が裂けるかもよって言ってたっけ……。けど上手かったら血が出ても痛くないかもって木下が言ってたような……。
でもそれは漫画や小説の話だろ……あいつ自身、鵜呑みにするのはよくないって言ってたが、そこはどうなんだ……?
なんてドキドキしながら他の事を考えていた。
だって、力は抜いといた方がいいって言われたし……こんな最中に『今から入る、王司のチンコが俺の穴に入ってくる、絶対に痛い』とか考えてみろよ。
力むっつーの……。
「力、抜いてね?もしも痛かったら俺の腕、噛んでもいいからね?てか噛んで?」
馴染ませるためか、何度か先っぽでそこをゆっくりと擦っている間にスッと目の前に腕を持ってきた王司。
こいつ図々しいにもほどがあるぞ……本当に心配してくれてんだろうが最後はお前の欲を言ってるじゃねぇか。殴りたくなる。
「あー……ちょー怖ぇ……」
それでも今の俺は俺だけのことを考えている。
王司の喜ぶことはあまりしたくないがこいつを避ける方法も見当たらない。うまく受け入れちゃえば王司の思い通りになるし、反抗して殴ればさらに喜ぶ王司。
繰り返し繰り返しで学んだことだ。
こいつのほとんどが、喜ぶことに繋がる。恐ろしいにもほどがある、なんて思いながら軽く出された左手の掌外沿(たなごころ)辺りを口に含めて噛む準備。
ちょっとでも痛ければ噛むんだ……それで気にかけた王司が止めそうになったとしても、そのまま続けろって言えばいいだろう。
「痛く、しないからっ……はぁ、さとしくん……」
「わかったから、俺の意思が変わる前に入れちゃえ、クソぼ――っ」
――け。
言い終わる前にいっきに挿れてきたこいつを、後で殴ろう……絶対に殴ろう。
「んンッ、ちょ、これ……っ」
「……はっ、ん、痛い……?もうちょ、っと、力抜けれるっ?」
「はァ……、」
バカかこいつ!
いっきに挿れてくるバカがさらに無茶な要求するなっつの!
こっちは全く初めてなんだよ!
全部、挿入 ってないのがまだわかりながらも、ローションをたっぷりかけていたとしても、長い時間ちゃんと解してくれてたつもりでも……くっそ痛ぇじゃねぇか!
思わず噛む準備をしていた歯が立ち、王司もそれに反応したのか左手にグッと少し力が入っていた。
待て待て待て、とりあえず落ち着け。いっきにキたのは最初だけで今はゆっくりと、徐々に挿入ってきてるのがわかる。
わかるが、これは裂ける……てか絶対に裂けてるだろこれ。現在進行中で裂けてるって!
血は出ているだろうか……やべぇ、外は暑いっつーのに俺の体だけ冬かってぐらい冷えてそう。熱過ぎて冷えてそう……冷や汗が出てきてるのが、おもいっきりわかる……。
「さ、智志くんっ、大丈夫?抜く?やっぱり痛いよね、ごめんね?」
俺の噛み具合と表情を見たんだろう。
王司も王司で苦しそうな表情を浮かばせながら、そしてさっきとはまた違う泣きそうな目をしながら俺に声をかけてきて、抜こうとしていた。……が、それはどうだ?
ここまできて抜く?
で、また振り出しか?
「ハッ、待ておうじ……チッ」
舌打ちをして、
「――ん゙っ、ケホ、ッ」
王司の首を、チョップするかのように殴る。
そして咳き込む王司に俺は歪む顔を隠さず言ってやる。
「そのまま続けろ……」
額にうっすら汗を浮かせてる奴がなにを強気に言ってるんだ、ってなるが、しょうがねぇだろ。今の俺なら出来そうな気がするんだ。
必死の必死で、こいつが俺に気を遣いながら、表情を窺いながら、噛む力を感じながら、頑張ってんだ。ド変態でドMだが、ド変態のドMだぞ。
そいつが頑張ってんだ。
「あと、このまま、止まられても……痛い、だけなんだけど」
そう伝えると王司はやっぱりバカで勢いよく『ごめん……!』と謝ってから、いっきに最後まで挿れてきやがった。
「バッ、ぁ……っ」
当たり前に指の太さとは比にならないぐらいのソレを突き上げられて一瞬の息も出来ないほどの圧迫感が俺を責める。
続けろ、とは言ったが“いっきに来い”とは言っていない。
普通、ごめんって謝って挿れてくるか?
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