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変わったのも変わるのも
「さと、しくん……」
あれから、報告したまでに俺は部屋に戻ってきてずっとゲームをしている。王司もさっき生徒会のものをやり終えたらしく帰ってきた。
全部クリアはしていたが秘密のステージが解除されたみたいだからさ。これだからこのゲームはやめられないな!
もう平三にこのソフト返す気なくなってきたわ。
そう思いながらやっていただけなのに王司はまだ俺が怒っていると勘違いしているみたいだった。
考えてみろよ。
まだ怒っていたら昨日のセックスはどうなる?
俺は不機嫌なままヤったってことか?
そんなの出来るわけないだろ。つーかあのぶち切れも痛みとともに消えてるって。……あ、今朝のクッキーでまだ怒ってるって感じ取ったとか?
あれは嫌がらせだけど小学生みたいな悪戯だって。
別に、そこまで気にする必要はないだろ……と、言ったらこいつは満足だろうか。
「智志君、ごめんね?あれは、そういう意味で言ったんじゃなくて……」
ソファーに座る俺の足下に正座して縋るように手を膝の上に置いてきた王司。
そういう意味でって、どんな意味だ。
しかし他に理由があるなら聞いてみてもいいよなぁ。本当にもう怒ってねぇから責める理由がねーし。
「じゃあ、なんだったんだよ」
「え、っと……っ」
一言で返したのがまずかったのか、ビクッと肩を上がらせながらギュッと掴む俺のジーンズ。
その姿がやっぱり可愛いと思ってなかなかゲームに集中出来ない。チラ見じゃなくてガン見で今の王司を見たいな。
どんなにくだらない理由だろうがデリカシーのない発言をしようが、こうなった時の王司にはなにも期待していない。
期待、しているといえば整い過ぎた顔を見ることぐらいだ。
泣くか泣かないか。あの瞬間が、さぁどっちだ?ってなって、俺が楽しくなる。
「智志君……」
掴む手が震えている。怒られる期待でもしているのか?
毎回毎回、期待通りになると思うなっつの……。
どんな表情なのか予想はつくものの、見たいという気持ちが抑えられなくなってきた俺は中断ボタンを押す。
「王司、言ってみろ」
ぴしっ、と手の甲にデコピンをするかのように指で弾いて王司の顔を見る。
「さとしくぅ、ん……!」
「……」
予想は、泣きそうな顔だった。いや、それを通り越して、王司は泣いていた。
そんなにダメだっただろうか。――たったの二日、三日と口を利かなかったぐらいで。
その後は普通に接していたのにな?
王司にとって“無視”とはツラいものだったか。
「うっ、ひッ……お、おれぇ……っ、自分が、突かれて、ひっくッ……!あんあん言うとかっ、想像出来なくて……!それで引かれて、さと、智志くんに嫌われたらッ……て、考えたら、この、先っ……受けとか、出来なくて……!ごめんなさいッ、うぅ……!」
俯かせた顔は見えなかったが涙がボタボタと床に落ちている。
激しいしゃっくりのせいで聞き取りづらい部分もあったがなんとか頑張って伝えてくれたおかげで言いたい事がわかった。
ようは、喘ぎまくってる王司を見て俺が嫌いになるんじゃないかと、そう思ったわけだな。はぁ……まいったな……どうも殴りたくなってきた。
「ふ、ぅぅッ、智志くんっ、む、しん、けいな事、言って……っ、ごめん、ねぇ……!」
泣き喚く王司に持っていたコントローラーをテーブルに置き、なにもなくなった俺の手は王司の胸ぐらを掴んで、ついでに顔も上げさせた。
涙でぐちゃぐちゃな顔なのに汚いとも思えず、そのせいか王司が大好きな暴言もすぐに吐けないでいる俺。
「王司、」
だけどここでなにか言わないとずっと引きずっているだろうよ。こいつはそんな奴だ。しつこくて、変に執着してる王子様。
一度は本気でブサイクだと言ってみたい。
「お前の喘ぎ声とか、二回しかヤってねぇのにたくさん聞いてるから。今さら過ぎるぞ」
とりあえず、これが俺の言う事だろう。
「へっ……?」
「受け役をやれと言ってるわけじゃないし、突っ込むのはお前でも構わない。大丈夫だ……喘ぎが気になって出せないなら、」
〝俺が鳴かせてやるから〟
そう言って数少ない俺からのキスを与えて掴んでいた胸ぐらを離し、ゲームを再開させた。
こんな性格になったのは誰のせいか――言わなくてもわかるだろ?
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